急拡大するESG投資で日本が抱える最大の課題 白井教授が語るエンゲージメントの重要性

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日本の金融当局の関心も高い。日本版スチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードはイギリスをモデルとして金融庁が中心となってまとめたもので、市場に浸透してきている。

「これからの課題としてはESGの中のEとSが大きい。Sは(労使関係や女性の活躍促進など)いろいろな問題が入っているため、情報開示の標準化が難しい。Eは気候変動に関して開示が必要な情報はある程度わかっているが、現時点では各社バラバラなので、今後は情報開示の標準化をどう図るかが課題となる」と言う。

世界の中央銀行や金融当局が気候変動リスクへの対応について協議する場として、2017年にNetwork for Greening the Financial System(NGFS、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)が設立され、日本からは金融庁と日銀が参加している。

このNGFSが6月末に、金融機関に対する気候変動リスクを考慮したストレステストのガイドラインを発表した。先行するイギリスではコロナ禍の影響で銀行や保険会社のストレステストの提出が来年末に延期されたが、いずれ日本も実施していく方向にある。ということは、「日本の金融機関も自らの投融資の気候変動リスクをしっかり把握する必要性が高まる。そのため、銀行自身が投融資先の企業にGHG排出量を減らすようにエンゲージメントを行うことも増えてくるだろう」と白井氏は見る。

ESG投資の問題点とは

一方、ESG投資の問題点としてはこう指摘する。

「開示レポートを美しく見せかけて、実態が伴っていないグリーンウォッシュの問題がある。また、ESG評価会社が乱立し、同じ企業に全然違う格付けをしているという整合性の問題もある。各社の重視する点が違うので、参考にはなるが、鵜呑みにできない。ESG特化の株価指数にも電力会社が採用されていたりする。まだまだESG投資は過渡期にあり、株価にもゆがみが出やすい」

企業の取締役会のガバナンスについても「改善しているが、まだ独立社外取締役が少数で、ESGへの理解が乏しい取締役も多い」。

「だからこそエンゲージメントの重要性が増す。すべてのESG情報を総合的に見て問題点を把握し、焦点を絞って対話を行う。それにより企業の真の問題点を明らかにでき、経営改善を促すことにつながる」と話す。少数株主の代表としての企業経営のモニタリングという意味では、エンゲージメントは社外取締役と同様の機能を担っている。

日本では外国投資家の保有割合が増えたといってもヘッジファンドなどの短期筋が多いため、「相対的にESG投資やエンゲージメントが根付きにくい」。また、「日銀のETF(上場投資信託)買いにしても、物を言わない株主が増えるばかりで、ガバナンスと逆行する」と問題点を指摘する。

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