急拡大するESG投資で日本が抱える最大の課題 白井教授が語るエンゲージメントの重要性
6月半ば、国際オイルメジャーであるBPが2050年までの石油価格の前提を1バレル70ドルから55ドルへ下方修正し、最大175億ドルの減損損失計上を公表した。これもコロナ禍の影響以前に、ブラックロックなどの運用会社がBPの監査委員会に対し、パリ協定に沿った石油価格の前提へ引き下げるよう働きかけた影響が大きい。要するにESG投資の成果だ。
「将来的に世界の人口増で石油消費量が増えるという前提は、パリ協定を考えればもはや現実的とは言えない。化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトによって石油会社や電力会社の“座礁資産”は増える。ほかのオイルメジャーもBPに追随せざるをえなくなるだろう」と白井氏は予想する。
アメリカでもESGが加速
パリ協定を脱退したトランプ政権下のアメリカでも、ブラックロックなどの運用会社がESGに本腰を入れるにつれ、企業が対応を迫られている。
「アップルなどは消費エネルギーの100%を再エネで調達するRE100を宣言しており、サプライヤーのCO2削減も働きかけている。もし民主党政権に変われば、就任後にパリ協定に再加入し2050年までに再エネ100%の実現を掲げるバイデン氏によってグリーン政策が推進され、国を挙げてESGの流れが加速する可能性が大きい」
「RE100を宣言している大企業が、次第にそのサプライヤーにもRE100の実現を要求するようになると、日本の部品メーカーは今から切り替えておかないと取引から外される恐れがある」と白井氏は警告する。
世界の潮流を受け、「日本企業も生き残りのために必死に変わろうとしている」と認める。実際、東京証券取引所も今年3月にESG情報開示実践ハンドブックを作成し、ガイドラインを示すようになっている。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が提言する企業の情報開示についても、日本ではすでに270以上の企業・機関がTCFDに賛同を表明している。この数字は欧米諸国に比べても多く、日本企業の関心は高い。
TCFDは2015年12月、金融システム安定化を図る国際組織の金融安定理事会(FSB)によって設置された。2017年6月に最終報告書を公表し、気候変動関連のリスクと機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つを情報開示するよう提言した。指標としてはGHGの排出量や排出原単位(インテンシティ)、間接排出量まで含むスコープ1~3の数値などが推奨された。
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