南アフリカ現地ルポ--勃興する黒人中間層、黒いダイヤの光と影
ネルソン・マンデラ元大統領の運転手だった反アパルトヘイトの闘士の1人、リチャード・マポーニャ氏が経営するマポーニャ・モールには、銀行、高級ブランドショップ、スーパーマーケット、レストランなどが入っている。モールに到着したのは平日の朝8時30分。朝9時のオープンまで、まだ時間はあるが、すでに駐車スペースには多くのクルマが止まっている。店員は「9時を過ぎればもっと混むし、休日になると大混雑になる」と言う。
華やかさの一方で、「負の面」も垣間見える。こうしたショッピングセンターでは昼間でも、強盗が押し入るなど治安は決してよくない。そのため要所に自動小銃を持った警備員が配置されている。
決して安全な場所ではないため、ほとんどの外国企業はこうしたショッピングセンターと直接の取引関係は結んでいない。専門のディーラーを経由した間接販売が主体だ。
そうした中で果敢に飛び込み、 ブラック・ダイヤモンドからの支持獲得に成功したのがソニーだ。96年に南アに進出したソニー現地法人は黒人街の中に重要なチャネルがあることを見つけた。それはショッピングセンターなどにテナントとして入る「ファニチャー・ショップ(家具屋)」だ。
南アには「OKファニチャー」「ベアーズ」「モーケルス」など、大小多くの家具屋チェーンがあり、全土で約6000店もある。ソニーはそのうち約3000店と取引を行っているのだ。
家具屋には、ベッドやソファなどの家具だけでなく冷凍庫、ガスレンジ、テレビなどの電気製品も売られている。最大の特徴は、ほとんどの顧客は一括払いをせず金利を負担しながらも30回払いなどの分割払いを選ぶこと。毎月決まった金額を支払い、ソファの次はステレオ、ステレオの次はテレビ、という具合に品物をそろえていく。
南アでソニー製品を取り扱う店舗は家具屋を除けば、量販店や独立系ショップなど約400店。つまり、3000店に及ぶ家具屋チャネルは主力チャネルであり、全売り上げに占めるシェアも半分弱程度になっているという。