香港でなお続く騒乱が訴えるアジアに迫る危機 日本にはいったいどんな行動が求められるか

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上場禁止となれば、アリババ、テンセントなど巨額の中国企業株式がアメリカ市場で取引停止になる。株式が雲散霧消するわけではなく、株主は保有し続けてよいが、株式市場での取引が禁止されれば、投資家は安全売買できない株式から一斉に撤退し、株価は暴落の危機に瀕する。よってこの手段は「核オプション」と呼ばれる。香港ドルに米ドルとの交換を遮断する手法は、伝統的「経済制裁」の一手段であるが、この時点では伝家の宝刀としての効用が大きいように思う。

長い間、イギリスの対中政策はビジネスと金融を政治と安全保障より優先させ、批判のある中で2015年には、習近平を文字どおり赤絨毯で迎えた。そのイギリスも今や、中国の抑圧的政治、西側に対する攻撃、とくに香港に関する英中合意を反故にする態度に鑑み、急速に踵を返しつつある。オーストラリア首相も、北京による貿易や人の移動への制限措置に激しく反発し、突然の豪州人への死刑判決を加えた「政経司」三位一体の攻撃にも、正対してひるむ姿勢は微塵も見せていない。

大手企業は歓迎のステートメントを発表

中国政府は、香港国家安全法は香港の混乱を鎮め、経済活動継続に有益だと説明する。大陸全土に商いの手の伸びる大手企業は「長いものには巻かれろ」と観念したのか、香港上海銀行やスタンダードチャータード銀行などは歓迎のステートメント(声明)を発表した。

しかしアジアでの活動を香港に集中させる多くの金融ファンド(運用資産は910億ドルに達し、日本、シンガポールおよび豪州の総和より大きい)は、香港国家安全法が施行されれば、当局の介入で情報も報道も取引も自由を失い、世界とつながるネット回線にはつねに当局の手が伸びる危険があるため、アジアの別の場所に移るしかないとファンドマネジャーたちは異口同音に言う。

6月4日の天安門の日、世界中のZoomは幾度も断線し、中国の通信網や技術に依存する危険が身近になった。個人情報や重要データの管理を規制する「中国サイバーセキュリティ法」の適用地域は中華人民共和国内と規定されているが、適用地域は香港を含むという解釈変更など、北京政府には造作もないことであろう。

さて日本にはどんな行動が求められているか。ある経済人は言う。「中国を非難すれば、中国の市場を失う危険がある。原則に固執すれば利益を失う」と。ある言論人は言う。「原則を忘れて利益を追求すれば、強者の横暴を許すことになる」と。ある文化人は言う。「意地を通せば窮屈だ、程々がよいのではないか」と。

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