電力契約で相次ぐトラブルは人ごとではない 消費者庁が全事業者に法令順守の点検を要請
2020年4月に行政処分を受けたイーエムアイ(電話勧誘販売の一部業務停止。9カ月)の事例では、電話営業の際に顧客に勧誘目的であることを告げず、「電力の自由化にともないまして、次回の検針日から基本料金が弊社にて20%お安くなるご連絡となりまして」と話を切り出していた。
その後、別の担当者が電話をかけ「わたくしどもの方で再度数点確認をいたしまして、ご料金お引き下げについてご案内させていただいておりますので」として契約切り替え手続きに必要な情報を得ていた。結局、この電話を受けた消費者は契約を締結したが、会社側は期中解約金や解約事務手数料などの支払い義務があることを告げていなかった。
「検針票」を安易に見せてはいけない
国民生活センターによれば、電力契約の変更手続きに必要な情報が詰まった「検針票」に狙いを定めるケースもあるという。
検針票は契約中の電力会社から契約者へ電気の使用量などについて通知するものだが、そこには「供給地点特定番号」や「お客様番号」といった電力契約に必要な情報が詰まっている。小売事業者が検針票の情報を聞き出し、消費者の十分な理解を得ないまま契約を切り替えたケースもある。
6月に寄せられたある相談事例では、消費者は契約中の大手電力会社からの電話だと認識したまま話が進んだ。手続きをしなくても割引が受けられると信じて検針票の情報を伝えた。ところが、届いた契約完了通知に別の電力会社名が書かれており、「契約の切り替え」だったことに気づいたという。
消費者庁は4点を注意喚起しているが、勧誘を受けた場合、電話ならば事業者名を必ず聞き、訪問営業の場合は名刺をもらって相手の身元を確認すべきだろう。また、契約変更を決めかねている状況で、極めて重要な個人情報が詰まっている「検針票」の情報を安易に教えたり、見せたりすることは避けたほうがよい。
実際、国民生活センターに寄せられた相談にはこんな事例がある。団地を訪問して契約変更を勧める営業担当者に住民は「団地全体で電力契約をしており、自分だけが勝手に契約先を変更することはできない」と断った。
だが、その営業担当者は「お隣の棟ではいくつか契約している」と言ってくる。そして、「電力料金の試算だけでもやってみませんか」と言われ、差し出した検針票の写真を撮影された。後日、料金の試算を持ってくるという話だったが音沙汰がないという。
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