電力契約で相次ぐトラブルは人ごとではない 消費者庁が全事業者に法令順守の点検を要請

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トラブルの背景には多数の事業者が参入したことによる競争激化はもちろん、目には見えない「電気」という商材のわかりにくさもある。これまで契約していた電力会社から契約を切り替えても停電しやすくなるなど支障が生じるわけではなく、基本的に供給される電気も変わらない。

そのため、契約変更を促す側は、電気料金の”安さ”をアピールするだけでなく、ほかのサービスもセットにして売ることが多い。例えば、電気料金に応じて、買い物や飲食に使えるポイントが貯まるという特典をつける形もある。

安くするつもりが、むしろ割高に

国民生活センターなどへの相談件数が増加する一方、数字だけ見ると電力の契約先切り替えが徐々に浸透しつつある。電力・ガス取引監視等委員会によると2020年3月の新電力シェアは16.1%(販売電力量ベース)。とくに東京電力エリアは21.7%と最も高く、累積スイッチング件数は654万件におよぶ。

消費者庁長官が小売電気事業者の売り方に懸念を口にした前日の6月16日、りらいあコミュニケーションズ(東証1部上場)が、電力・ガスの営業で不適切な電話勧誘や電話勧誘時の録音音声の改ざんがあったことを公表した。りらいあコミュニケーションズは、東京電力エナジーパートナーの電力・ガスの電話勧誘業務の委託先だった。

東京電力エナジーパートナーは、顧客対応品質の向上のため録音データの確認を行っているが、2019年3~12月までに提出された44件の音声データが改ざんされていた。「現場管理職が不適切な営業があったことを隠すために行っていた」(りらいあコミュニケーションズ)としており、そのうち4件では顧客の同意を得ずに契約を結んだ可能性があるという。

消費者庁は6月17日に出した要請の中で、小売電気事業者に対して委託先や関係会社も含め、法令の遵守をあらためて徹底するように求めている。だが、この要請でトラブルがどれだけ減るのかは不明だ。

そもそも、既存の電力の料金体系をきちんと把握していなければ、消費者は契約を切り替えるメリットを簡単に判断できないだろう。そのため、十分な説明もなく「安くできる」とばかり強調する勧誘には注意を要する。実際、「安くなると聞いて契約を切り替えたが、むしろ料金が上がったという相談が寄せられている」(国民生活センター)。それは決して人ごとではないだろう。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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