「仕掛学」は感染拡大を止める切り札になるか 身近な問題から社会問題まで解決する可能性

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人の行動変容を促す「仕掛学」は、身近な問題から社会の大きな問題まで解決する可能性を秘めている(写真:Erik Khalitov/iStock)
「ソーシャルディタンス」「うがい・手洗い」「咳エチケット」……。新型コロナウイルスの影響で人々は「新しい生活様式」への行動変容が求められている。国や自治体は、これ以上の感染拡大や第2波を防ぐために啓蒙活動を続けているが、現場では必ずしもうまくいっていない。こうした状況下、ある手法が脚光を集めている。テレビで特集されるなど、人の行動変容を促す切り札と目される「仕掛学」だ。いったいどのようなものなのか、ロングセラーとなっている『仕掛学:人を動かすアイデアのつくり方』から内容の一部を紹介する。

トム・ソーヤに学ぶ「人を動かす」極意

どのようにすれば人々の行動を変えることができるだろうか。誰もが、人から言われて素直に従うほど従順ではないし、上から目線で指示されると反発したくなるときもある。周りの人がしていないから自分もしなくても変わらないと思う心境は誰もが心当たりがあるだろう。

『仕掛学:人を動かすアイデアのつくり方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

楽をしたいのは人間の性であり、個性であり、権利なのだ、と開き直っている人は著者だけではないはずである。

マーク・トウェインの名作『トム・ソーヤの冒険』の主人公トムも楽をしたいタイプである。罰として塀のペンキ塗りをするはめになったときに、(本当は楽しくないのだけど)楽しそうにペンキを塗る姿を友人たちに見せつけることで友人たちがペンキ塗りをしたくなるように仕向けている。

イソップ寓話『北風と太陽』では北風と太陽が旅人の上着を脱がせることを競うときに、北風が無理やり上着を吹き飛ばそうとして抵抗されるのに対し、太陽は燦々と照りつけることで自ら脱ぐように仕向けている。

これらの話には人の行動を変える奥義が記されている。「したほうがいい」と直接伝えても効果がないことは明らかなので、「ついしたくなる」ように間接的に伝えて結果的に問題を解決することを狙うのだ。それが仕掛けによるアプローチだ。無理やり行動を変えさせようとするのではなく、つい行動を変えたくなるように仕向けるのである。

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