映画の「邦題が違いすぎる問題」背景にある事情 映画「ザ・バケット・リスト」の意外な邦題

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本題に戻って食事のときの雑談で無難なものは何か、仕事の話は無粋というものですし、やはり映画じゃないでしょうか。ところが、邦題問題です。ちょっと何点か実例を見てみます。

「Sister Act」→「天使にラブ・ソングを」

シスター=修道女とくるよりも前に、妹?姉?と言う言葉が出てくるでしょうし、ACT=芝居をする、ふりをするということもちょっとストレートには入ってきません。そうなると「修道女のふりをして」という邦題を付けてしまいそうですが「天使にラブ・ソングを」はなかなかしゃれていていい邦題ですね。でも逆に邦題から英語で「Love songs for Angels」という映画を観たか?と言っても「君はLAエンゼスのファンなのか?」と頓珍漢な会話になってしまうでしょう。

「Trouble with the Curve」→「人生の特等席」

こちらは「カーブに問題あり」です。クリント・イーストウッド演じるプロ野球のスカウトマンが、データ分析などで評価の高かった新人を見に行って、カーブを打つときに腕が流れてしまうという選手の欠陥に気がつく、というところから付いた原題です。

野球が国民的スポーツのアメリカならば「おーそれは面白そうな映画だ、ぜひ見に行かなければ!」となるかもしれませんが、日本ではやはり別なタイトルが興行的には無難でしょう。親子のすれ違いがこの映画のテーマでもあるので野球観戦と掛けて「人生の特等席」はなかなかの名タイトルと言えます。

日本の映画のタイトルも激変

また、日本映画のタイトルも海外ではまったく違うもので紹介されています。いくつか紹介しましょう。

「海街ダイアリー」→「Our Little Sister」
 「千と千尋の神隠し」→「Spirited Away」
 「秋刀魚の味」→「An Autumn Afternoon」

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どれも、海街=鎌倉という歴史ある海沿いの街が持つ雰囲気、神隠しという言い伝え、サンマという魚の名前から秋を感じられる、などなど日本の社会での共通認識があって初めていいタイトルだな、と感じられるものばかりです。

こうしてみると、邦題全然ちがう問題は単純に翻訳の問題ではなく、それぞれの文化圏の違いということがわかってきます。で、ディナーの雑談はどうしたらいいのか?という相談への回答としては、英語の原題を調べておくことです。その違いについて語り合うだけでもディナーの雑談は盛り上がるでしょうし、お互いのバックグラウンドの違いに対する敬意を深め合えるのではないでしょうか。

デビット・ベネット テンストレント最高顧客責任者

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David Bennett

1979年にジャマイカで生まれ、カナダ国籍を持つ。カナダトロント大学大学院卒。早稲田大学にて日本語を習得、学習院女子大学大学院にて日本古典文学を学ぶ。東京でコンサルタントとして社会人キャリアをスタート。AMD社コーポレートバイスプレジデント、および同社のレノボアカウントチームのゼネラルマネージャーを務め、コンシューマー、コマーシャル、グラフィックス、エンタープライズプラットフォームなど広範な事業を手掛ける。2018年5月レノボ・ジャパン社長に就任、2022年6月から現職。古典文学が好き。

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