専門メディアが掘り当てた、ネットの"金脈" "孫正義の愛弟子"アイティメディア大槻社長が語る

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――スマホからのアクセスが増えると、収益化が難しくなるといった面もある。

スマートデバイスからのアクセスは現在、全体の30%にのぼる。一方で売り上げは6%しかない。それでも「ようやくここまできた」という印象だ。アクセスの割合とのギャップを埋めていくのが、業界全体の課題だろう。

作戦はハッキリしている。スマートデバイス向けで伸ばせるものは徹底的に伸ばす。専門メディアのように高付加価値型ではなく、薄利多売でボリュームを出して売り上げを上げるイメージだ。ねとらぼなどは、優秀な営業マンをつけて広告を売ることを想定していない。極論を言えば、(グーグルやサイバーエージェントなどが提供する)アドネットワーク(複数のサイトに一括で広告を配信する仕組み)の収入だけでやっていける形を目指す。ただ、「@IT」や「EE Times Japan」など、パソコンから読まれているサイトもあるので、バランスには注意しなければならない。

――PVやコンテンツの質についてどんな考えを持っているか?

ネットメディアを15年やってきたが、PVは今でもわかりやすい指標として使われているし、これからも重要な指標として残るだろう。ただし、その代替となる指標はあると思っている。

われわれもかつて経験したが、PVを追いすぎると、よくも悪くも、編集者がPVを伸ばすことに酔ってしまう。上げ方にはいろいろなやり方があるが、安易なページ分割やアダルト系のネタはよくない。こうした方法でPVを伸ばそうとすると、どこかの時点で必ず、広告主から「そんなサイトには価値がない」とリジェクト(掲載拒否)されてしまうからだ。たとえば、ねとらぼはそうしたネタでPVを伸ばしていると思われがちだが、意外と堅いネタも多い。

そこで、アンチPVというか、PVを乗り越えるような取り組みは随分とやってきた。サイトの滞在時間を伸ばすことや、会員数を伸ばすことなどだ。やはり、重要視する指標は媒体によって異なるのではないか。テックターゲットの場合は、PVではなく毎月の会員登録数を伸ばすことが最大のポイントになる。

タイムマシンの時差が縮小

――最近では、SNSを利用して拡散を狙うバイラルメディアなど、さまざまなメディアが誕生している。注目するメディアは?

大槻 利樹(おおつき・としき)●1984年日本ソフトバンク(現・ソフトバンク)入社。出版事業部で広告局長、マーケティング局長などを歴任。99年の分社化と同時に、執行役員インターネット局長としてソフトバンクパブリッシングに転籍。同年12月にソフトバンク・ジーディーネット(現・アイティメディア)を設立、代表取締役社長に就任

ソフトバンクの孫社長はかつて、海外でヒットした事例を日本に持ち込む「タイムマシン経営」でビジネスを成功させてきた。アイティメディアも、設立当初は積極的に北米の会社から学んだ。すごい参考になったし、身震いするほど面白かった。

有力IT誌「PC Magazine」の編集長と会ったときは、おカネや顧客の話しかしていなかった。記事や編集がどうかということだけでなく、ビジネスの話をするわけだ。リーチする読者の定義から、どのように広告主に価値を説明するか、といったところにエネルギーを割いていた。北米のメディア人はつねにビジネスを意識して、当初からグローバル展開を目指している。そこはすごかった。

ただ、最近では、タイムマシンの時差も縮まってきたのではないか。北米のグローバルメディアから学ぶことが少なくなっている気がする。日本に上陸した「ハフィントンポスト」などもあまりワクワクしないし、興味のあるメディアは少ない。だからこそ、自分たちでやるしかない。

(撮影:大澤 誠)

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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