100億円寄付を即決、ユニクロ柳井氏の「危機感」 本庶氏と山中氏の医療研究に強力なサポート

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国が大学に拠出する研究費は使途が限定されるほか、予算の関係から年度を繰り越して使うことが難しい。

そのため、本庶氏は「国費は毎年の予算に左右され、長期的展望がなかなか望めない。柳井基金は10年間の展望で活用できるため、問題に安心して取り組むことができる」と言及。山中氏も「(使途などの)自由度が非常に高く、研究組織を運営していくうえでありがたい。生涯をかけて蓄えたお金を研究費にいただき、重い責任を感じている」と述べた。

本庶氏からの打診を快諾

寄付のきっかけは個人的な付き合いからだった。柳井会長と本庶氏はともに、山口県宇部市内の中学校と山口県立宇部高校の出身。同窓の縁もあり、2019年にはファストリの新入社員や全国の店長らが集まる場で対談が実施された。

本庶氏(左)からの「申し出」を柳井氏は半ば予想していたという。写真は6月24日の会見(記者撮影)

その後2人で食事をしたとき、本庶氏から50億円程度の寄付をお願いできないかと打診があった。「多分(寄付のことを)言われるんじゃないかと思っていたので、『喜んで』とお受けした」(柳井会長)。

本庶氏への寄付を決めた柳井会長は、同じ京都大学の教授で、以前から面識のあった山中氏にも何か援助できないかと考えたという。そこで山中氏に電話で連絡を取り、本庶氏と同額を寄付する決断に至った。

「大金を”無心”する厚かましいお願いだったが快諾いただいた。寄付の文化が日本でも広まっていく呼び水になれば一層ありがたい」(本庶氏)。欧米では、企業経営者が研究支援や慈善事業などへ寄付する文化が根付いている。新型コロナウイルスへの対策でも、ツイッターの共同創業者であるジャック・ドーシー氏やアマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏らが早々に寄付する考えを表明した。

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