100億円寄付を即決、ユニクロ柳井氏の「危機感」 本庶氏と山中氏の医療研究に強力なサポート

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柳井会長はソフトバンクグループの孫正義会長兼社長と並び、アメリカの雑誌「フォーブス」の日本長者番付の上位に長年ランクインする常連だ。国内経済界の大物が研究支援のための寄付やその意義を表明したことは、今後日本でも寄付への関心が高まるきっかけとなる可能性はあるだろう。

一方で今回の寄付からは、最近の柳井会長の関心や事業運営に対する意識の変化もうかがえる。1984年にユニクロ業態を立ち上げ、山口県の紳士服店を一気にグローバル大企業へと発展させたが、複数の市場関係者は「柳井さんはここ数年、以前のように対外的に売上高の目標を語らなくなった」と指摘する。

かつてのファストリと言えば、3兆円や5兆円といった強気の売上高目標を掲げるのが常だった。

ところがこの2~3年、ファストリのIR資料などから全社売上高の目標値の記載はほとんど消えた。目標としていた売上高の早期達成が難しくなった事情もあるが、「規模を追うよりサステナビリティー(持続可能性)を優先する姿勢を打ち出したいという、柳井会長の意識の変化が大きい」(証券アナリスト)。6月18日に開かれたユニクロ銀座店の内覧会で柳井会長は、「売上高は問題ではない。社会に本当にプラスとなる、新しい産業を作っていく」とも語っている。

経営者として果たすべき役割

サステナビリティーへの取り組みは、企業評価の際の重要な指標となっているだけでなく、消費者の間でも関心が高まりつつある。

特に衣料品という消費者に身近なビジネスでは、在庫の廃棄ロスを減らしたり、積極的に社会貢献したりする企業の姿勢はブランドイメージの向上にもつながる。ファストリではリサイクル素材を活用した商品開発や難民支援などの取り組みを強化しているが、会社の顔である柳井氏個人の寄付活動も、サステナビリティーを重視する企業として大きな意味を持つ。

また、寄付金の一部が研究費に充てられる新型コロナの問題は、柳井会長にとって民間の経営者が社会的に果たすべき役割の重要性を強く感じさせる出来事にもなったようだ。

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