「東京で働く」しか頭にない人が気づかない視点 新常態とテクノロジーの進化が地方に活路を開く
では、住居費はどうか。住宅は地価の差の影響を最も受けるため、現時点においても都市部と地方部の差が大きい支出項目だ。都心は地価上昇が続いており、今後も一定の上昇が続くと仮定すると、都市部の住居費の低減は難しい。
一方、地方においては空き家が大量にあることが課題になっている。地方自治体によっては空き家を紹介するマッチングサイトを運営しているところもあるが、条件を問わなければ無料に近い格安価格で移住者に紹介されている。
テクノロジーに対する感度を上げる
空き家をリフォームし、安く提供するサービスが普及すれば、ただでさえ安い地方の住居費が、さらに安くなると考えられる。補助金利用も想定し、空き家の購入とリフォームで総額1000万を切る価格が実現できれば、住宅ローンの利用を考えても現在の平均よりも住居費は28%安くなる。これは、地方部で持ち家を持ったとしても都市部よりも63%安い価格で住める計算だ。
都市部とまったく同じ環境が整うとは言えないが、テクノロジーを徹底的に活用することにより、少なくとも現在よりは生活の質の面のギャップがかなり埋まると考える。ギャップが解消して生活コストが最大45%も安くなるのであれば、地方移住を考える人が増えてもおかしくはない。ここが私たちの考えている「一筋の光明」であり、実現に困難を伴う地方創生において頼るべき要素だ。
また、最近では在宅勤務が定常化する「ポスト・コロナ(コロナ後)」が盛んに議論されるようになった。コロナを経験したことにより、ある程度の数の会社が、コロナ後に常識となるテクノロジーや働き方である「ニュー・ノーマル」を受け入れるようになる。
大企業で働く人ですら、都心に通う必要がなくなり、地方移住を後押しする可能性があるのだ。実際にそうなるかどうかは、地方において、自分たちの魅力を引き出すためにテクノロジーを活用できるかどうかにかかっている。
(次回に続く)
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