「高卒認定試験」という道を選択した人のリアル 「高校に行く」だけが正解じゃない

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――高認合格後は?

(イラスト:不登校新聞)

大学へ行きたいとか、明確な目標のために高認を受けたわけではないので、1年ぐらいフリーターをしていました。

親戚が海外に住んでいるというツテもあったので留学もしましたが、家庭の事情もあって21歳のときに日本に戻りました。

そのときには「保育士になりたい」という目標があったので、夜間の専門学校を探し、昼間は働きながら専門学校に通いました。

日本に帰ってきたのが5月ということもあってすぐに入学できなかったんですけど、書類の準備だけで翌春に入学できたという意味では、高認を取っておいて損はなかったなと思いましたね。

22歳で専門学校

――なぜ保育士の道を?

これも母の影響なんですけど、「手に職をつけろ」とずっと言われていたんです。

それに、不登校をしていたときに知り合いの子どものベビーシッターをやっていた経験もあって仕事として興味があったし、「今からでも挑戦できるかも」と思ったのがきっかけです。

とはいえ、専門学校もいろいろきつかったです。働きながら3年間通うということで体力的にも大変だったし、なんだかんだ言っても学校なので、雰囲気も苦手でした。

それに、女性だけのクラスということで人間関係も複雑だし、いじめもありました。いじめる側になるというのも初めて経験したし、私がいじめの対象になることもありました。

ただ、そのとき私は22歳と、現役で入ってきたほかの生徒より少し年上だったというのが救いになったなと思います。

人間関係のいざこざがあっても「私は保育士の資格を取りに来ているだけだから」と、なかば強制的に割り切って物事を考えるだけの余裕ができていたからです。

10代のときに同じことができたかといえば自信がないですし、もしかしたら続かなかったかもしれません。

(資料:不登校新聞)

表現が適切ではないかもしれないけど、高認は私にとって「ショートカット」だったなって思うんです。

高校に3年間通うことで青春したり、勉強だってきちんと学べると思うけど、まだよく見えていない将来のために無理して「高校に通わなくちゃ」って思わなくてもいいんじゃないかって。

大学や専門学校へ行くか、働くか。15歳になったから、18歳になったからってすぐに決める必要はないし、とりあえず高認に受かった後で、今後どうするかを考えてみるというのも1つの手段だと思うんです。

そういう見方で高認というものを検討してもいいんじゃないかなって。

私のように、一気に全部合格しようとせず、1冊の参考書をひたすら解くというのも1つのやり方だと思います。

最初のうちは「100点を取らなきゃ」とさんざん気負っていたのであまり軽々しく言えないんですけど「クイズを受けに行く」というぐらいの気構えで臨むというのも大事だなって思います。

――ありがとうございました。

(聞き手・小熊広宣)

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日本で唯一の不登校専門紙です。不登校新聞の特徴は、不登校・ひきこもり本人の声が充実していることです。これまで1000人以上の、不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場しました。

また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

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