「高卒認定試験」という道を選択した人のリアル 「高校に行く」だけが正解じゃない
――高認の勉強を始めるうえで不安は?
いろいろありましたけど、まずは勉強そのものですね。フリースクールでも勉強らしい勉強なんてほとんどしてこなかったし、なかでも数学は大の苦手でした(笑)。
それに「高認はそんなに難しくないよ」という周囲の声もプレッシャーになりましたね。
励ましのアドバイスということはわかるんだけど、簡単と言われれば言われるほど「そんな試験に落ちてしまったらどうしよう」って不安になるんです。
勉強への苦手意識があったぶん「やると決めたからには100点を取らなきゃ」っていう強迫観念みたいなものもなかなかぬぐえませんでした。
――そうしたなか、どうやって高認の勉強を始めたのでしょうか?
母が買ってきてくれた参考書をとにかく読みこむことにしました。高認の試験は年に2回あるんですけど、まずは国語と現代社会だけ受験しようと決めました。
なんでこの2科目に絞ったのかというと、参考書を読んで「これならいけそうだ」と思ったからです(笑)。
最初の受験で2科目に絞り、それに合格した後はフリースクールのスタッフに教えてもらったり、進学校に通っている妹に教えてもらったりしながら勉強を続けました。
あくまで私の場合ですけど、「1回の受験で全科目に合格しよう」という目標を立てなかったことがよかったんだと思います。
2科目に絞ったことで勉強の範囲も狭まりますし、集中力も持続します。何より「2科目に合格した」という事実が自信につながりました。
もし、最初から全教科に合格するというモチベーションで始め、それで何科目か不合格になってしまったとしたら、ますます自信をなくしていたかもしれませんし、高認も途中で諦めてしまったかもしれません。
ただ、母としては、全教科を受けてササっと合格してほしかったみたいなんですけど。
家族にどう思われるかということのほうが重要だった
――お母さまの影響は大きかったんですね。
そうですね。「中卒のままだと怖い」というのも、私がそう思っているというより、家庭内での視線を気にしてそう感じていたというほうが正しいかなって。
母も妹も学歴にこだわるタイプだったので、世間からどう思われるかということより、中卒のままで家族にどう思われるかということのほうが私にとって重要だったんです。
高校へ行こうと思って学校見学にも何度か行きましたが、ここに3年間通うというイメージがどうしても持てなくて諦めました。
母からの期待、家での肩身の狭さ、そういう状況を少しでも変えられるかなっていう思いもあり、高認を受けることにしたんです。
母はいつも「不登校したことをリカバリーしてほしい」と願っていました。でも、私は自分の過去をそんなふうに考えたことはありません。
その点で母とはいまだに折り合いがつかない部分もありますが、結果的には高認を取ることでできることも増えましたから、高認をすすめてくれた母には感謝しています。