神戸のパンダが20年ぶりに中国へ帰る背景事情 高齢を理由に「契約の延期」ができなかった

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飛行機に積む輸送箱に、タンタンがスムーズに入れるようにする必要もある。「搬出の少し前から練習を始めます。普段、棒で示した所にタンタンの鼻先を誘導して、できたらご褒美をあげるターゲット・トレーニングをしているので、その延長でやるつもりです」と谷口さんは話す。輸送箱は王子動物園で準備する。大きさは調整中だ。

また、パンダは暑さに弱い。高齢のタンタンには特にこたえるだろう。タンタンの中国行きが夏になった場合、王子動物園から空港までの道のりは、空調付きのトラックを手配する予定だ。タンタンが入った輸送箱をトラックから飛行機に積み替える際、屋外に置かれる可能性も踏まえ、動物園は対策を検討する。

迫る返還期限

タンタンが飛行機に乗る際は、検疫の関係でエサの持ち込みが制限される可能性もある。植物防疫所の関西空港支所によると、竹は日本で検査して「植物検疫証明書」が発給されれば、中国まで持ち込めるという。タンタンの輸送料は神戸市が支払う。チャーター機ではなく、旅客機に混載する可能性が高く、その場合、輸送料はさほどかからない。王子動物園は、望ましいルートとして関西国際空港の利用を想定しているが、どの飛行機と空港を使うかは未定だ。

2000年にタンタンが来日した際は、生まれ故郷の四川省・臥龍を7月13日に車で出発して成都に向かった。成都~上海は飛行機で移動して、7月13~15日に上海動物園で検疫。上海~関西国際空港は飛行機に乗り、関空からトラックで王子動物園に到着した。

タンタンの契約期限は7月15日に迫っている。ただ、現在はコロナの影響で成都行きの直行便が飛んでいないので、タンタンの出発は7月15日よりも後になる。暑さも踏まえ、動物園はタンタンの体に負担がかからない時期を中国側と調整する。秋以降の出発になる可能性が高まっているが、8月中に出発する可能性も残っている。いつになるかは、出発の1カ月以上前に公表する見込みだ。

東京・上野動物園で生まれた雌のシャンシャン(香香)は、6月12日に3歳になったばかり。シャンシャンは、上野動物園を所管する東京都とCWCAの協定で「満24カ月齢時に中国へ返す」となっていた。だが、シャンシャンの日本での滞在延長を望む声が強かったため、シャンシャンを中国へ送り出す期限は今年12月31日に延長された。シャンシャンの中国での住みかは明らかになっていないが、タンタンと同じ都江堰基地の可能性もある。

もしタンタンとシャンシャンが都江堰基地の公開エリアで暮らすようになれば、日本でお別れしても、再び2頭に出会えるかもしれない。

中川 美帆 パンダジャーナリスト

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なかがわ みほ / Miho Nakagawa

福岡県生まれ、早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)

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