神戸のパンダが20年ぶりに中国へ帰る背景事情 高齢を理由に「契約の延期」ができなかった

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タンタンが中国で過ごすのは、四川省にあるCCRCGPの都江堰(とこうえん)基地。別名「熊猫楽園」で、「熊猫」はパンダを指す。つまりパンダの楽園だ。

筆者はここを2018年11月9日に訪れた。ちょうどアメリカのサンディエゴ動物園から雄のガオガオ(高高)が11月1日に到着して、検疫をしている最中だった。ガオガオも高齢を理由に都江堰へ来た。

当時のガオガオは推定27歳で、人間なら約80歳。年齢が推定なのは、野生で捕獲されたためだ。都江堰では、野生で負傷して左足を失った雄のパンダのダイリーも見かけた。自然が豊かで、確かにここなら、高齢のパンダや負傷したパンダも過ごしやすそうだった。

ちなみに、ガオガオの妻のバイユン(白雲)は、タンタンの姉。タンタンに似て、毛並みがつややかな可愛らしいパンダだ。バイユンと息子のシャオリーウー(小礼物)は2019年5月16日に都江堰に着き、サンディエゴ動物園にはパンダがいなくなった。

海外のパンダが中国に渡るケースは?

中国本土と香港・マカオ・台湾以外にパンダは62頭いる。このうちメキシコの2頭以外は、すべて中国に所有権があり、中国から借りている。

海外のパンダが中国へ渡るケースは、大きく分けて2つある。1つは、海外で生まれたパンダが繁殖適齢期に差し掛かった場合。中国はパンダが多く、自然繁殖に向けてふさわしい相手に出会える確率が高いことが背景にある。繁殖目的で中国へ行ったパンダは多い。和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで生まれたパンダは11頭が中国へ渡った。アメリカやスペイン、オーストリア、マレーシアで生まれたパンダも中国へ旅立っている。

もう1つは、高齢のパンダが中国へ行くケースだ。こちらは例が少ない。サンディエゴ動物園のパンダとタンタンの例をきっかけに、これから増えるかもしれない。パンダの高齢化対策は、中国でも重要な研究テーマだ。

アドベンチャーワールドにいる雄の永明(えいめい)も27歳と高齢なので、中国行きの話が出たことがある。ただ、永明はまだ繁殖できる。今年6月11~12日に雌の良浜(らうひん)と交尾しており、良浜が妊娠すれば、秋頃に赤ちゃんが生まれる予定だ。

カルガリー動物園で中国産の竹を食べる雄のダーマオ(大毛)(2019年4月、筆者撮影)

このほか、特殊なケースとして、新型コロナウイルスを原因としたパンダの中国行きもある。カナダのカルガリー動物園は、パンダを中国へ返すと5月12日に発表した。同園はエサの竹を中国から空輸していたが、コロナで中国とカルガリーを結ぶ直行便が途絶え、竹不足に陥ったためだ。

筆者が6月20日、同園の広報担当者に2頭の状況を問い合わせたところ、「中国行きに備え、非公開で検疫を始めています。安全確保のため中国と協力しており、2頭が中国へ行く時期は現時点でわかりません」とのことだった。

フィンランドのアフタリ動物園は、パンダを中国へ返すかもしれないと現地メディアが6月12日に報じた。同園の入場者数は、パンダが来た2018年に27万5000人となり、前年より約10万人増えたが、2019年は約19万人に減少。この状況に、コロナによる長期休園が追い打ちをかけた恐れがある。

ただ、その後、筆者が同園に確認したところ、「パンダを中国へ送り返すことについて、まだ議論していません。動物園は6月1日に再開しました。入場者数がピークになる時期は6~8月です」(コミュニケーション・マネジャーのLea Lahtinen氏)との回答だった。同園のパンダは1頭で1日15~30kgの竹を食べる。竹はオランダからトラックで週1回運ばれ、供給は遅れていない。

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