コロナ後の日本「東京一極集中」が抱えるリスク 個による自助、民による分散、公による備えを

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首都圏に暮らす住民は、災害等のリスクが潜在的に高い地域であることを自覚し「自助」の精神を涵養して、自らの命は自らの手で守ることである。身近にできることとして、少なくとも1週間分の水や保存食を備蓄して、当座の命を永らえることが肝要である。

事業所については、データセンターや重要インフラを東京などに一極集中させているとすれば、機能を分散させることである。あわせて、パンデミックに伴うテレワークやテレビ会議などが定着し始めたのを好機として、事業所などの配置の検討、働き方改革にも結び付けてリスク分散を図ることである。

最後に、国や自治体は、首都圏に蓄積されてきた多くのいびつ(人口の過密、快適ではない生活環境、災害時の都市機能マヒなど)を速やかに是正することである。人口稠密でリスクの高いエリアの人口を抑制して、国土・地域全体でバランスのとれた新たな社会の構築を一層推進していくことが望ましい。

政府の指揮中枢機能の代替設備を首都圏外に

首都発災の際には、政府の中枢自体が被災する可能性があり、意思決定や初動が遅れたり、継続的な震災対処に支障を来したりするおそれもある。政府機能を移転することが最善の策であるが、少なくとも政府の指揮中枢機能の代替設備を首都圏外に準備する必要があろう。

コロナ禍は、国家的危機に立ち向かう際に、政府と自治体がいかなる役割を担えばよいのかという課題も突きつけた。さらに、政府においては、各省が所掌する権限を維持(分担管理原則)しつつ、内閣官房に総合調整権を付与して危機対応力を強化してきたが、それにも限界が露呈し始めている。課題は実に根深い。

ニューヨークでは、2012年のハリケーン・サンディにより満潮時の3メートルを超える高潮が押し寄せ、停電も発生した。パリでは、100年に1度程度の洪水がここ数年頻発している。OECDでは、3.11をトリガーとして、リスクガバナンスのあり方について精力的に検討し、進捗評価レポートを2018年に公表している。東京一極集中に潜むリスクは、世界の主要都市にとっても「対岸の火事(リスク)」ではなくなりつつある。

(磯部 晃一/アジア・パシフィック・イニシアティブ シニアフェロー)

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『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

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