コロナ後の日本「東京一極集中」が抱えるリスク 個による自助、民による分散、公による備えを

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そのリスクを数字で簡潔に表すならば次のとおりである。

マグニチュード7.3の首都直下地震:今後30年間に約70%の確率で発生。被害想定は全壊・焼失家屋最大61万棟、死者最大2.3万人。
利根川決壊による洪水(200年に1度の確率):堤防決壊から1週間後に最大約160万人の居住地域(利根川支流の江戸川流域含む)が浸水。死者最大3800人。
宝永噴火(1707年)と同規模の富士山噴火:噴火後3時間で神奈川県や東京都の都心などでは微量の降灰により鉄道停止、車の通行困難。降雨を伴うと停電、断水、通信障害などのおそれ。

数字に表れない真のリスクは何か?

地震、洪水、火山の甚大な被害予想は以上のとおりであるが、そこに潜んでいる真のリスクは次の3点に要約されよう。

災害発生後に急増する被災者

最も深刻に捉えなければならないのは、発災後に急増する膨大な被災者である。1都3県(千葉、埼玉、神奈川)の首都圏人口は、約3660万人で日本の総人口の約3割に当たる(ちなみに、韓国・ソウルは49.6%、フランス・パリは18.2%、イギリス・ロンドンは13.4%)。

仮に、被災者がその3分の1と仮定しても、約1200万人に上る。3.11による発災直後の避難者数は約33万人だったので、首都圏の被災者が桁違いに多いことがわかる。被災者を収容する施設は十分なのか、いかに水や食料を供給し続けるか、さらに断水下で排泄の処理をいかにするか、課題は山積している。

いざとなれば自衛隊はじめファーストレスポンダー(「最初の対応者」を意味し、救急隊に引き継ぐまで的確な応急手当てをする:「コトバンク」より)が救援に駆けつけてくれると国民は思っているかもしれないが、首都圏の場合はそう簡単ではない。

自衛隊は防衛警備の任務にも就いているので、災害派遣に投入できる最大勢力は約11万人となる。仮に1000万人強が被災すると、自衛隊員1人で100人を助ける計算になり、これまで経験したことのない数値となる。救援部隊は首都圏の外縁部から、計画にあるルートを経由して求心的に都心部に向けて急行することになっている。しかしながら、道路や橋梁は各所で寸断され、避難する車両や人であふれることも想定され、現場に駆けつけるには相当時間がかかることを覚悟しなければならない。

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