海外展開を加速する中国の2大ショート動画アプリが、相次いで逆風にさらされている。欧州データ保護会議(EDPB)は6月10日、北京字節跳動科技(バイトダンス)のTikTok(ティックトック、中国版の漢字名は「抖音」)を調査するための作業部会の設置を発表。ほぼ同じタイミングで、北京快手科技の快手(クァイショウ)の海外版であるZynn(ジン)がグーグルのアンドロイド向けアプリ配信ストア「Google Play」から削除された。
TikTokの調査を発表したEDPBは、欧州連合(EU)が定める一般データ保護規則(GDPR)に基づいて加盟国のデータ保護監督当局の代表により構成される機関だ。作業部会設置の目的についてEDPBは、データ収集方法やセキュリティに懸念があるとするEU議員からの要請を受け、欧州におけるTikTokのデータ処理やプログラム動作について「より包括的な理解を深めるため」だとしている。
調査会社のセンサータワーによれば、TikTokは2019年に欧州で延べ9100万回ダウンロードされ、ゲームを除くアプリのダウンロード数ランキングで4位に入った。しかしアメリカでは昨年からTikTokのデータ収集やセキュリティを懸念する声が高まっており、それが欧州に飛び火した格好だ。
ダウンロード数のランキング操作の疑いも
一方、Zynnが削除されたのはグーグルのアプリストアの規定に違反したためだ。快手の説明によれば、ユーザーが投稿したある動画に対するクレームがきっかけで、グーグルがアプリを削除した。問題の動画はユーザーが別の動画プラットフォームからZynnに転載したもので、快手は調査のうえ「厳しく処理した」としている。
だが、Zynnが具体的にグーグルのどの規定に違反したのかは不透明だ。Zynnは今年5月からサービスを開始し、ダウンロード数を爆発的に伸ばしていた。センサータワーの調査データによれば、アップルのiOS向けアプリ配信ストア「App Store」のダウンロード数ランキングで5月27日に首位を獲得。Google Playでも5月29日に6位に浮上した。
ダウンロードの驚異的な増加の背景には、Zynnのユーザーが友達に動画を紹介し、その友達がアプリをインストールすると現金を獲得できるプロモーションの仕組みがあった。それが規定違反のランキング操作だとグーグルに判断されたとの見方もある。財新記者はZynnの削除とプロモーションの関係について問い合わせたが、快手の回答は得られなかった(訳注:その後の6月18日時点でもZynnは削除された状態が続いている)。
(財新記者:関聡)
※原文の配信は6月13日
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