ついに起こった支持者「トランプ離れ」の実態 世論調査に浮かび上がる岩盤支持層の揺らぎ

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もちろん、大統領選挙までには、まだ5カ月の時間がある。2016年の大統領選の終盤がそうだったように、情勢がトランプ有利に傾く可能性も十分に残されている。事実、2016年の大統領選は8月と10月にクリントン氏が2桁近いリードを見せたかと思えば、7月、9月、11月にトランプが僅差で追い上げるなど、行ったり来たりした。

バイデンの現在のリードは、2016年の大統領選でクリントン氏の支持率がピークに達したときの水準と大差ない。当時、トランプは女性をめぐる下品な雑談の録音が流出したり、イスラム教徒の戦没者家族と対立したりして支持率の低下を引き起こしていた。

今年の世論調査結果も2016年と同様、動きの遅いジェットコースターのように大きく変動する可能性は確かにある。4年前の大統領選では、クリントン氏の私用メール問題や健康問題に関する否定的な報道がトランプの支持拡大に少なからず貢献した。

バイデンの「ステイアットホーム」運動は主にトランプを狙い撃ちするものといっていい。一方のトランプ陣営は、バイデンのどこに攻撃を集中するのか照準を定め切れていない。そのせいだろか、トランプの全国的な支持率は2016年ほどの高みには届かないままとなっている。

今選挙を行えば、トランプは負ける

それでもトランプにとっては、今が支持率の「底」である可能性もなくはない。現在の抗議デモ、あるいはパンデミックに対する大統領の初動対応が、11月になった段階でも有権者にとって今のように重大な意味を持ち続けているとは限らない。

そもそも、国内の政治情勢が5カ月後にどうなっているかなんて誰にも予想できないはずだ。この5カ月間に起こったことだって誰にも予測がつかなかったのだから。晩秋から冬に到来するとみられるコロナの第2波よりも早く、夏から秋にかけて経済が急速に回復する可能性にトランプ支持者は望みをつなぐことができる。

4年前がそうであったように、選挙戦がトランプに有利に傾いた場合には、同氏は僅差で勝利を勝ち取ることができる立場に短期間で舞い戻ることも不可能ではない。

というのも、大統領選の選挙人団はトランプの共和党に比較的有利な構成となっているからだ。トランプが再選を射程圏内に収めるのに、支持率を10ポイントも回復させる必要はない。登録有権者を対象にした2016年大統領選の最終全国世論調査で、トランプは平均して5ポイント前後の差をつけられていた。この程度の差であれば、巻き返しは十分に可能だ。

だが現時点で、トランプはあまりに出遅れている。仮に大統領選が今日実施されたとすれば、トランプに有利な選挙人団もバイデンにとっては重大な脅威とはならない。バイデンはクリントン氏に比べれば白人有権者、中でも大学を出ていない白人有権者の支持率が高い。たとえ世論調査が4年前と同じくらい不正確だったとしても、今選挙を行えば、バイデンが勝利する。

(執筆:Nate Cohn記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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