とはいえ、4月下旬にかけて死亡件数が世界で2番目に膨れ上がり、PCR検査の増加目標達成に何度も失敗していた政府は大きな批判を浴びていた。これを受けて、イギリス各地にドライブスルー式の検査所が設置された。
だが、検査場所が増えても医療従事者の数には限りがあるので対応しきれない。そこで投入されたのが、イギリス陸軍だ。現在96カ所設置されているドライブスルー式の検査所のうち、92カ所は陸軍によって運営されている。個人防護具(PPE)を着用して患者から検査検体を採取するのも陸軍の仕事になる。
検査のラボも全国にいくつか増やして結果がでるまでの日数短縮を目指した。5月上旬には、在宅検査キットを渡される事もあった。これは、ドライブスルーで検査をオンライン予約して、検査所まで行くと自宅で検査できるキット渡される仕組みだ(ただし、これは検査キットがすぐ底をついたので、長く行われることはなかった)。
PCR検査増加の恩恵を受けたのは?
こうした検査能力増強施策により、5月20日には1日最高15万人の検査が行われるようになった。実際に5月に入り、私も軽い症状がでたときにすぐにオンラインで予約して3時間後には検査を受けることができた。なお、イギリスは現在でもPCR検査は症状のある人のみに行われるという当初からの条件は変えていない。
PCR検査数が5月に入って全国的に安定して増えたことで、一番大きな影響がでたのは医療従事者ではないだろうか。それまでは、自身に症状がなくても家族に症状があっただけで2週間の自主隔離する必要があった。いつ自分が感染するか、もしくは無症状のまま感染をさせてしまうほうになるか、心配をしたままでの勤務だった。
検査可能になったことで、安心して勤務ができる。ただしこれも完全とは言えない。PCRの結果が陰性は「今の段階」のことであって、5日後にはまた違う結果になることもある。だからこそ繰り返し検査をできる検査能力がない限り、症状のない人にまでPCR検査をしてもあまり意味がないと言われる。
理想を言えば、医療従事者は症状に関係なく週に1度は検査を受けて陰性であることを確認することが望ましい。だが、今のイギリスではそこまでは無理だ。患者ケアに関してはPCR検査の増加はあまり影響は受けていない。前述したようにPCR検査の結果よりも患者の症状と画像検査の結果などにも注意点に置くからだ。
日本はPCR検査の少なさが批判される一方、死亡件数が少ないこともあり、「独自の対策が功を奏した」と評価されることもある。もちろんいたずらに検査数を増やす必要はないが、イギリスの医療従事者へのPCR拡充の遅れとその結果を考えれば、医療従事者が定期的にPCR検査を受けられるなど、第2波に備えた検査体制の見直しや拡充は必要なのではないだろうか。
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