第2波来る前に考えたい「 PCR検査」の増やし方 イギリスはいかにして検査数を増やしたか

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この指針は医療従事者に対しても同じで、政府は早い時期から「医療従事者には優先的に検査をするように対応する」と公言はしていたものの、なかなか実行されなかったのである。

例えば、4月半ばに新型コロナの病棟に勤務する医師が38度以上の熱を出した際も、「軽症だから自宅で自主隔離をするように。検査は必要ない」と言われた。このように医療従事者であっても重症化しない限りは検査をしてもらえない事が多かった。

「本人に症状があれば7日間、同居家族に症状があれば14日間の自主隔離をすること。検査は必要ない」。これが医療者への国からの指示だった。日本でたびたび聞く院内感染という言葉はイギリスではほぼ耳にしない。看護師が何人、医師が何人感染したのか? 検査をしないから、人数も誰が感染者なのかさえわからない。

反面、ジョンソン首相やハンコック保健相やチャールズ皇太子などいわゆる「上流階級」に属する人は例え軽症であっても3月の時点ですぐに検査を受けて陽性と判明次第、自主隔離に入ることができた。感染拡大を防ぐ要のNHS医療従事者の検査が遅れる一方で、この階級的とも言える検査優先の矛盾は大きな議論を呼んだ。

PCR検査に関係なく治療は受けられた

ただし、PCR検査を受けられなかったことと、症状悪化や診察が受けられない関連性を指摘する声はほとんどなかった。イギリスでは、新型コロナの診察や治療は、検査の有無や結果より患者の症状に基づいて行われるからである。感染が疑われる症状があれば、感染患者という前提で診察や必要に沿った検査を行っているのだ。

特に、レントゲンなどの画像検査の結果は重視され、感染の疑いが濃厚であれば、検査の結果がまだでも入院させることは珍しくない。PCR検査を受けられなかったがために感染が疑われる症状が悪化しているにも関わらず、診察も治療も受けられなかった、という例はおそらくほとんどなかったと思われる。実際に私が勤務している病院でも、PCR検査の結果待ちの患者が入院してくることはごく普通だ。入院すると、ほかの感染患者同様、酸素吸引や点滴治療などが開始される。

また、PCR検査が陰性であっても、同様に患者の症状と画像検査などの結果に基づいて必要と判断されれば入院させて酸素吸入などの治療を行い数日たってから再検査を行う。

PCR検査だけに頼らないのは、検査数が少ないことはもちろんだが、結果が100%正しいとは限らない、という前提があるからだ。画像検査などほかの検査と組み合わせるのが通常で、PCR検査はあくまで「判断材料の1つ」として捉えられている。

一方、PCRの検査が陽性であっても軽症であればそもそも診察をしない。政府の指針通り「自宅で自主隔離をする。保健所への連絡も必要はない」のである。

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