六ヶ所村、核燃再処理工場ゴーサインに疑問符 航空機墜落事故の評価と対策は甘すぎる
こうした対策に対して、専門家から疑問の声が持ち上がっている。東芝で原子炉格納容器の設計にたずさわり、格納容器設計グループ長を務めた後藤政志氏は、F16がある速度以上で衝突した場合、衝撃に耐えられずに工場建屋が破壊される可能性が高いと指摘している。
後藤氏は東日本大震災が起きた2011年3月11日以降、原子力施設の安全対策の不備について積極的な発言を続けている。後藤氏がコンピューターソフトを使って事故解析したところ、六ヶ所村の再処理工場の高レベル廃液ガラス固化建屋に総重量20トンの戦闘機(F16に相当)が衝突すると、「衝突速度が毎秒187.5メートルに至った場合、壁や天井が破壊される限界点を超える」との結論を導き出した。
さらに、「衝突速度が毎秒150メートルであっても、機体の総重量が30トンに至れば、破壊の判定基準を超える」とし、航空機衝突への対策は不十分だと指摘している。
規制委や日本原燃が見過ごした事故
日本原燃はこれまで、「航空機が衝突しても耐えられるように建屋が設計されている」などと説明してきた。記者自身も2016年12月に六ヶ所再処理工場を取材で訪れた際、広報担当者からそのような説明を受けた。
だが、日本原燃の説明は、総重量約20トンのF16が毎秒150メートルの速度で衝突した場合という前提条件があり、それ以上の速度で衝突した場合やF16よりも重量のある戦闘機が衝突した場合の評価は実施していないという。
想定速度を毎秒150メートルとした理由について、日本原燃は「最良滑空速度」であることを挙げている。これは、「エンジンの推力がなくなった状態で飛行(滑空)する際の速度」のことを指す。これは、ジェット機としてはさほど速くないスピードだが、日本原燃は「設定している衝突速度を上回るような状況としては、故意によるものであることが想定されるが、新規制基準における設計としては『故意によるものは除く』とされているため、考慮していない」と説明している。
しかし、規制委員会や日本原燃は、毎秒150メートルをはるかに上回る速度での墜落事故が六ヶ所村近くの海域で発生している事実を見過ごしている。
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