六ヶ所村、核燃再処理工場ゴーサインに疑問符 航空機墜落事故の評価と対策は甘すぎる
2019年4月9日、三沢基地に配備されていた航空自衛隊のステルス戦闘機F35Aが基地の東方約135キロメートルの太平洋に墜落し、訓練中だったパイロットが亡くなった。同年6月10日に航空幕僚監部が公表した資料によれば、墜落直前の急降下時の時速は1100キロ以上、毎秒300メートルを超えていた。
ちなみに、F35Aの総重量は約30トンとされており、日本原燃が試算に用いているF16の1.5倍に相当する。航空幕僚監部は「(墜落時にパイロットは)空間識失調(平衡感覚を失った状態)に陥っており、そのことを本人が意識していなかった可能性が高い」と推定している。つまり、日本原燃のいう故意でなくても、同社が想定する毎秒150メートルを上回る速度での墜落事故が起きていたことを意味する。
「青天井」の安全性は求めない
事故が起きた直後の4月23日の規制委員会で、日本原燃は航空機衝突に際しての防護設計の詳細について説明した。しかし、直前のF35墜落事故についての質問はなく、日本原燃が実施した試算に関する質疑だけが淡々と進められた。
審査書案が了承された5月13日の記者会見で、規制委員会の更田豊志委員長は、「(新規制基準は)すべての航空機の落下に対して工学設計として対処せよということを求めているわけではない」と説明。「新規制基準は青天井(の安全性)を求めているわけではなく、一定のレベルのリスクは許容せざるをえない」との見解を示した。
この説明は、原子力施設の安全対策の前提として事故の可能性をゼロとしていないことに基づくが、問題はその内容が一般社会の常識に照らして妥当性を持つかだ。
再処理工場の航空機落下対策は、落下確率が1年間に1000万分の1超の場合には、原子力施設に防護設計を要求、すなわち墜落しても壊れないことが必要だとしている。それ以下の落下確率の場合は、防護設計は要求されない。
こうしたルールについて、六ヶ所再処理工場の建設差し止め訴訟原告弁護団の伊東良徳弁護士は、「『墜落したら壊れても仕方がない』という考え方に基づいている。設備が壊れた後、作業員がポンプやホースなどの可搬式の設備を用いて放射能の大量放出を防ぐだけのことしかできない」と指摘する。
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