“コロナ自粛"で患者激減、歯科医療の存続危機

都内では4月の診療報酬「3割減以上」が半数

一般にはあまり知られていないが、歯科の院内感染防止の歴史は長い。古くは1980年代のB型肝炎による感染拡大の教訓から、歯科医療機関では手術用グローブの装着やハンドピース(切削器具)の滅菌をはじめとしてさまざまな感染防止の取り組みが進められてきた。

これらは主に血液や唾液を通じての感染リスク防止の取り組みだ。また、施設基準として2008年4月に外来環が導入されたことで、飛沫感染の防止も図られてきた。

そうした取り組みもあり、今回のコロナウイルス感染拡大時でも歯科診療に関連した院内感染事例は見られない。

もっとも課題がないわけではない。今回の新型コロナウイルスは、血液感染を主な経路とするB型肝炎やAIDS(後天性免疫不全症候群)などとは異なり、待合室やトイレなどを含めた院内全体での感染対策が必要になる。

また、感染防護のうえでは、医療用マスクやガウン、アルコール消毒液に至るまでさまざまなものを備えておく必要がある。そうした防護用品は10年ほど前の新型インフルエンザの流行をきっかけに求められるようになったが、備蓄や事業継続計画の策定では取り組みの差が見られることも事実だ。

歯科診療所を直撃した受診抑制

特に今回のコロナ禍では、一般市民の多くもマスクやアルコール消毒液を買い求めた結果、医療機関といえども入手が困難になった。国や都道府県による感染防護具の支援も心もとない。前出の都内歯科診療所の院長によれば、「5月末までに東京都から地区の歯科医師会を通じて届けられたのは、診療所1カ所当たり18枚のマスクだけだった」。

患者数の激減は、歯科診療所の経営に大きな打撃を与えている。

東京歯科保険医協会が実施した緊急アンケート(6月4日発表、回答数1108人、回答率31.6%)によれば、4月の保険料収入の減少率が「30%以上」と答えた歯科医療機関の割合は回答数の50%に達している。都内では土地・建物について「賃貸」と答えた歯科医療機関の割合が72%にも上っており、スタッフの人件費のみならず家賃も重くのしかかっている。

前出の橋村院長は、「雇用調整助成金や政策金融機関からの無担保・無保証の融資などによってしのごうとしているが、十分とは言えない。できれば経済産業省が創設した売り上げが激減した法人向けの持続化給付金の申請もしたいが、2019年5月の開業と日が浅く、特例措置の条件も満たさない」と頭を抱える。

また、手続きが複雑なことも関係者を悩ませている。前出の都内歯科医院の院長は、「雇用調整助成金は申請手続きが複雑で、何度も申請書類の作り直しを迫られた。役所に問い合わせても電話がつながらない。詳しい内容を知りたいが、診療所を何時間も留守にするわけにもいかない」と途方に暮れている。

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