“コロナ自粛"で患者激減、歯科医療の存続危機

都内では4月の診療報酬「3割減以上」が半数

歯科医院への来院患者が激減したきっかけの1つとして、厚生労働省のアナウンスメントを挙げる歯科医療関係者は少なくない。同省は東京都など7都府県に緊急事態宣言が発令される前日の4月6日に「歯科医療機関における新型コロナウイルスの感染拡大防止のための院内感染対策について」と題した事務連絡を、都道府県などに宛てて発出した。

それによれば、「歯科診療においては、唾液等の体液に触れる機会が多いことや歯の切削等によりそれらが飛散することがあるなどの特性に鑑み、感染拡大防止のため、以下の点に留意すること」としたうえで、次のように記載している。

「緊急性がないと考えられる治療については延期することなども考慮すること」

それを受けて、日本歯科医師会は「国民の皆様へ」と題した告知文を作成し、会員の歯科医療機関に配布。院内に掲示するように促した。そこには次のような記述がある。

「現在の新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえ、歯科医療機関には、緊急性が少なく延期しても大きな問題がない治療、定期健診、訪問診療などの延期の検討をお願いしています」

同文書では「治療の緊急性については、痛みや腫れなどを放置すると重症化や全身へ影響を及ぼすことがあります」「歯周病などの定期管理も全身状態に関係し、高齢者や特に在宅や介護施設での口腔衛生状態の低下で誤嚥性肺炎などが生じることが懸念されます」などとも書かれている。

「緊急性がないと考えられる治療」とは?

しかし、「緊急性がないと考えられる治療」の中身は定かでない。その一方で、こうした言葉が行政や歯科医師会から飛び出したこともあり、「国民の間に歯科医療の多くが不要不急なものであるというイメージが定着してしまった」(東京都内の歯科診療所院長)。

受付には飛沫感染防止のビニールシートを張っている(サッカー通りみなみデンタルオフィス、撮影は筆者)

同院長の歯科診療所では、4月の来院患者数が前年同月と比べて約25%も減少したうえ、5月には実に5割近くも落ち込んだ。

「院内感染防止対策についてはことのほか力を入れてきたのに、歯科診療所は感染リスクが高いといわんばかりの表現は、現場のこれまでの努力を無にするものだ」と、同院長は憤りを隠さない。

この歯科診療所では、歯周病安定期治療など継続的な受診が必要な治療に力を入れてきた。しかし、「今回のコロナ禍を機に、歯の痛みなど自覚症状のない患者さんの通院習慣が断ち切られてしまった。そうした患者さんの多くは高齢で、自身での口腔状態の維持管理が難しいだけに、今後、口腔内の状態の悪化から肺炎を患ったり、感染症のリスクがかえって高まるのではないか」と院長は心配を隠さない。

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