「不法就労する外国人」激増させた日本の大失態 「300万円の罰金」国から請求された経営者も

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ちなみに「ワンチェック」は偽造カードを見抜く機械を販売している企業。山田氏いわく「ニセのカードをつくる側も必死で、ホログラムまで精巧に再現されていて目視ではまずわかりません」という。

要するに、肉体労働を行う外国人は入国できない、とする「建前」のせいで、エージェント(中には詐欺同然の手口で途上国の若者を日本に送り込む業者もある)、さらにはブラックマーケットの人間がトクをし、そのツケは現場の留学生、技能実習生に押しつけられてきたのだ。

「知らなかったでは済まない」罰金300万円

この状態をクリーンにすべく国は動いた。しかし、今度はこのツケを雇用する側に払わせようとしている。

2019年4月1日、入国管理局は「出入国在留管理庁」へと格上げされた。その背景には、五輪開催の年から2025年の万博まで海外からの入出国が増え、国内の労働者も今より足りなくなる、という事情があり、組織は人数、予算共に大幅に拡充された。

そして、拡充された組織は「特定技能」と呼ばれる在留資格をスタートさせた。簡単に言えば、介護、建設、漁業など14の業種で、幅広く外国の人材を受け入れていく、と決めたのだ。

ところが、これが「滑った」。さらには暴走した。

まず、外国人が集まらない。5年で最大34万5150人の受け入れを目指すとしているが、2019年4月の制度開始から半年後、ビザが交付されたのはたった732人という滑りっぷりだ。この原因を山田氏が話す。

「途上国のエージェント、さらには日本で働きたいと思う外国人の方への告知がまったく足りていないのです」

その原因は、政治家のセンセイ方の事情だ。産業界・財界は人手不足に悩み、突き上げを続けていた。一方、政治家は選挙をにらんで強制送還も「国民の血税」、票田、献金の確保のため、急遽この法改正を実現する必要に迫られ、2018年12月8日に法改正を実現し、なんと2019年4月1日にスタートとした。これでは告知の時間もない。

しかもこの法案の一部を厳格に適用し始めた。入管法には「不法就労助長罪」があり、密入国者・不法残留者など、在留資格を持たない外国人を雇用すると300万円の罰金を科せられる。

以前は「働きたい」「雇いたい」というニーズの合致があったためあまり問題も起きず、罰金の件数も少なかったが、入国管理局が出入国在留管理庁になると摘発が急増した。

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