ジブリ作品の「物語」はこうして作り上げられる

鈴木敏夫×石井朋彦が説く「ジブリの仕事」

石井:生産者たちが読んでいたということでしょうか。

鈴木:資本主義が発達して、生産者だった人たちがみんな、衣食住を手に入れたでしょ? それまではみんな食べるのさえ大変だったわけだけど、みんなが食べられるようになり、着るものにも困らない、住むところにも困らないという時代になった。

それと同時に、とくに先進諸国において、いっせいに「生産者」だった人が「消費者」になった。ここから、世の中が変わったと思う。たぶん、ファンタジーはそのときになくなった、ということだと思うんですよ。もし、生産者たちがもう一度生まれて、その人たちに光を当てることができたら、ファンタジーの復活もあるかもしれない。僕の意見ですけどね。

人間が物語に求めているものとは?

石井:『思い出の修理工場』は、主人公は職人、つまり物を作る生産者です。物語の中に「黒いエージェント」という悪役が登場します。SNSを普及させて、「皆さんの記憶や思い出は、われわれでお預かりしますから、過去を振り返らずに未来を見ましょう」と誘惑する。

生産者たちの存在が、脅かされてしまうという物語です。作っている人がいなくなってしまったら、SNSだろうが情報産業だろうが成立しないはずなのに……という思いをこめて書きました。

鈴木:生産者って、労働者じゃない? 汗水たらして働くわけでしょ。その人たちのために娯楽はあった。ところが、その人たちがいなくなってみんなが消費者になっちゃったら、娯楽はどうなる? いらなくなる。皮肉なことだよね。

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──娯楽の中に倫理観があったというのは、とても納得です。私もファンタジーからいろんなことを学びました。

石井:何が正しくて、何が悪いことなのかって、本から学びましたよね。

鈴木:映画だってそうだった。あらゆる映画は「面白くてためになる」ものだったから。それが、そうじゃなくなったのが現代です。おもしろさだけを追求したら、おもしろくないんですよ。ジブリの映画がいい例だよね。本当に古めかしい映画です。

現代は、どうもみんな倫理観を失っている。それでも、どこかでみんな求めているのは、倫理と道徳だったりもする。ジブリの映画は、そういうことをやってきたんじゃないかって思う。

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