第2波の到来時には、ライフライン維持に欠かせない業種に限らず、テレワークや在宅勤務を行うことが難しい業種・業態の企業は中小企業を中心に少なくないことが想定される。これらの企業では、例えば飲食業や屋外広告業など、緊急事態宣言が出されることで収益に深刻な影響が出てしまうところも少なくないであろう。
緊急事態宣言が再び出され、顧客の消費行動が大幅に変わってしまったときの事業ポートフォリオを検討しておく、収益が大幅に減ってしまう場面を想定して内部留保を高めておくなど、企業存続のための事業戦略をきちんと検討しておく必要があるであろう。
また、5月ごろからようやくマスクやアルコール製剤が市中で購入できるようになってきたが、いつまた入手困難な状況に陥るかは不明である。企業として感染防止対策のために必要な個人保護具を2~3カ月分だけでも、この機に備蓄しておくことも重要であろう。
日本国内の感染者数は5月31日時点で1万7,589人であり、実際に従業員が感染した経験を持つ企業はまだまだ少数であろう。しかしながら、今後、第2波、第3波と、感染者数がさらに増大していった場合、従業員の間で感染者が出る可能性はますます現実味を帯びてくる。
このため、各企業において、実際に感染者が出た場合のシミュレーション(職場の消毒、濃厚接触者への対応、感染者の復職、その間の業務継続など)をきちんと検討しておくことが重要である。
また、感染者の復職時に周囲からの差別が起きてしまうと、他の社員が体調不良や感染を言い出しにくい雰囲気が生まれ、それが結果的に職場の集団感染を引き起こすきっかけとなってしまいかねない。感染者への差別を生じさせないよう会社方針の周知徹底、従業員への教育、復職ルールの適正な運用などを行っておくことも重要である。
メンタルヘルスや各企業特有のリスクにも配慮
今回のような異常事態が長期化することで、従業員におけるメンタルヘルス不調の問題が今後顕在化するリスクも大きいものと考えられる。普段以上に職場の上司は部下の様子に注意を払う必要があり、また、従業員がいつでも相談できる窓口を整備しておくことなども重要であろう。
業界団体等を中心に作成された業種ごとの感染拡大防止ガイドライン等をベースに、業務の特性に応じた感染対策を各企業で実施しておくことも重要である。
しかしながら、ガイドラインそのものが作成されていない業種も少なからずあること、業種ごとのガイドラインで必ずしも触れていないリスクもありうること等を念頭におき、各企業でも業務の特性上のリスクへの対応に漏れがないかをきちんと検証しておくことも必要であろう。
なお、筆者は産業医有志グループの一員として、中小企業経営者をターゲットに『企業向け新型コロナウイルス対策情報』を配信するプロジェクトを運営している。配信する内容は業務上の感染リスクが高い業種における感染予防策など、ガイドラインが作成されていない業種を含めたさまざまな業務上のリスクを捉えた実践的なものとなっている。これまでに配信した情報のバックナンバーは、東京商工会議所・ホームページ上で公開しているので参照されたい。
また、ウイルスをしっかり除去する、衛生的手洗い手順を用意したので、ご活用いただきたい。
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