ゼネコン「現場破壊」 反乱と倒産…地方ルポ 「脱談合」は何をもたらしたか

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 宮崎県では06年12月、安藤忠恕前知事が談合事件に絡んで逮捕され、元タレント「そのまんま東」こと東国原英夫知事が県政刷新を訴えて07年1月に就任。4月から4000万円以上の工事で一般競争入札を導入した。07年10月には1000万円以上に範囲を広げ、さらに08年1月からは250万円以上のすべての公共工事で一般競争入札を開始する。

05年度に97%と高かった落札率(県調査)は、07年4~6月の平均で約80%まで減少し、談合急減をうかがわせる。一方で、07年1月から11月までの建設業者の倒産件数は52件と、前年同期比でほぼ倍増した。

座り込みは、入札改革の痛みに耐えかねる業者の悲鳴だった。県建設業協会は「座り込みは会員業者によるものではなく、関係していると思われるのは迷惑な話」としながらも、「業界は疲弊しており、県へは要望を出していきたい」と話す。

すでに県内業者は、入札時の最低制限価格を引き上げてダンピングを抑制するよう要望。相次ぐ倒産を受けて県もその方針を了承した。

県内の建設投資額が1993年度の約8400億円から半減しても、業者は8%しか減らず、過当競争が続く。地鶏飼育といった異業種に進出した業者もいるが、「あまりうまくいっていない」(建設業関係者)のが実情だ。業者の苦悩を解消する最善策は見つからない。

大分県では業者が市の災害協力を拒否

同じ九州の大分県では、建設業者がさらに驚くべき行動に出た。

大分県佐伯市は07年4月、落札率95%超の公共工事入札で談合の有無を調査する制度を導入したが、県建設業協会佐伯支部はこの制度の撤回を要求。9月には「要求が通らないなら災害発生時の協力協定を破棄する」と申し入れたのだ。

この協定は水害などの発生時、復旧工事の協力について市と同支部が取り決めたもの。佐藤元・同支部長は「国や県に対しては、従来どおり復旧の協力を行う。だが、経費削減のため建設会社の社員の年収は350万円になってしまった。業者は十分苦しんでいる。市長や議員の人気取りでこれ以上、建設業が狙い撃ちされるのは許せない」と話す。

佐伯市は工事の調査制度の続行について「試行中の制度であり、現状では不透明」という。追い詰められた地方建設業者の「反乱」が、地域に思わぬ影響を与えようとしている。
(週刊東洋経済1月19日号より)

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