ゼネコン「現場破壊」 反乱と倒産…地方ルポ 「脱談合」は何をもたらしたか

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 福島県では1976年にも、当時現職だった木村守江知事が談合事件で逮捕されている。根深く「談合王国」の体質が残る福島県政の課題は、失墜した信頼の回復だ。出直し県知事選挙に民主党参議院議員から出馬し、06年11月に新たに就任した佐藤雄平知事は「全国でもトップレベルの厳しい制度を目指す」として、入札制度改革に取り組み始めた。

改革の中心は前述の長野県同様、一般競争入札の全面的な導入だ。07年4月から3000万円以上の公共工事で一般競争入札を導入。10月からは、さらに250万円以上の工事へと拡大した。電子入札制度で建設業者の事前の相談も防ぎ、実質的にほぼすべての公共工事で談合が不可能になった。

06年度には県発注工事の9割超で指名競争入札が行われており、平均落札率は約93%だった。それが、一般競争入札を導入した07年4月から10月までの半年間で86%にまで低下。11月以降も落札率は下落を続けており、県土木部では「落札率80%前後が半分近く、75%前後の工事が2割を占める」と話す。

事業者の倒産急増 異業種進出も困難

指名競争入札のぬるま湯につかってきた県内建設業者にとって、一連の改革は痛烈だった。東京商工リサーチによると、07年1月から12月までの県内の建設業倒産件数は59件と、前年に比べ約48%も上昇。「公共事業の縮小や資材費高騰が続き、建設業者の体力が弱っている。そこへ新しい競争入札制度の導入が一因として加わった」(同社郡山支店)。

福島県が実施した聞き取り調査に対して、サブコンや専門工事業者などで作る県建設専門工事業団体協議会は「元請けも下請けも採算が合わず、建設産業は崩壊してしまう」と回答。県建設業協会も県会議員に対して、「建設業は福島県の就業人口の1割を占める基幹産業。今の県行政は雇用維持など建設業が担ってきた役割を否定している」と苦境を訴えた。

公共工事依存からの脱却を目指して、県建設業協会では介護や農業などの新領域進出を奨励してきた。だが、慣れない異業種だけに困難に直面する業者がほとんどだ。

県建設業協会の三瓶英才会長も特別養護老人ホームなどの介護事業を展開しているが、「建設労働者に介護士をやらせるためには、一から教育が必要」と苦労を語る。農業への進出でも、販路の開拓や種苗の買い付けなどでJAなどの既存勢力の協力を得られず、苦戦するケースが多い。「もう少し役所が積極的に異業種進出を支援してくれたら」と建設業協会関係者は嘆く。

建設業の急速な業績悪化と業者たちの要望を受けて、福島県は公共工事入札の最低制限価格(長野県の「失格基準」に相当、数値は非公表)を4~8%引き上げた。県土木部では、「必要な修正については、今後も業者と議論を続けていく」という。
 こうした多少のショック緩和はあったとはいえ、談合行為を自主申告した業者に入札参加停止期間の減免を認める「密告制度」を導入するなど、県では脱談合改革の手を緩めていない。地元建設業者の厳しい冬は、まだまだ続きそうだ。

宮崎 役所前で座り込む地元業者の抵抗

「県発注工事は県内業者で!」「行政は俺たちを殺す気か!」。記録的な猛暑が続く07年8月、宮崎県庁前ではそんな過激なあおり文句を染め抜いたのぼりが掲げられ、十数人の男女が2日間にわたって座り込みを行った。

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