賭け麻雀の朝日新聞記者「停職1カ月」の妥当性

「なぜ解雇しないのか」の厳しい意見もあるが

しかし、例えば一般の事務職や、製造業の工場で働く社員が、賭け麻雀を行っていたことが発覚した場合、それが今回の事件と同様、仲間内のものであり、賭け金も大きくはなかったとしたら、出勤停止1カ月は重過ぎる処分と言えそうです。

出勤停止は、一般的な就業規則では、解雇や降格のように社員としての身分事態に影響を及ぼす処分を除いては、最も重い処分と位置付けられます。出勤停止期間中は無給となりますので、1カ月分の賃金が一切支給されないというのは、金銭的な意味でも非常に重い処分だからです。

その重い処分であることを踏まえても、今回は、賭け麻雀を行った当事者が、公正な報道を使命とする新聞社の社員であり、しかも、取材対象者と賭け麻雀を行っていたとなると、新聞社に対する信頼失墜など、会社イメージへの打撃も大きなものになります。

加えて、コロナの自粛期間中にも賭け麻雀を行っていたということですから、事の重大性はなおさらであり、確かに、最悪の場合は懲戒解雇も視野に入る中、本人の反省も踏まえ、出勤停止処分に留めたという朝日新聞社の判断は、企業秩序維持と本人に更生の機会を与えるバランスから、法的に妥当性のある結論と言えそうです。

同じ行為でも妥当か否かが変わってくる

このように、懲戒処分は、同じ行為を行ったとしても、行為者の職種や立場によっても妥当か否かが変わってくるものです。

ほかの事例においても、例えば私生活上の飲酒運転で検挙された場合、プロの職業ドライバーでは懲戒解雇が有効とされ、事務職員などでは懲戒解雇は厳しすぎるので無効とされる傾向にあるよう、業種や職種によって裁判所の判断も分かれています。

ですから、何らかの事情で、自分が懲戒処分を受ける立場になってしまったとき、客観的に見て、自分の行為や引き起こした結果の重大性や企業への影響と、処分の重さのバランスが納得いかない場合には、労働基準監督署や弁護士へ相談して、処分の見直しを企業側と交渉してください。それでもなお、企業が懲戒処分を強行した場合には、その取消をめぐって裁判などで戦うことになります。

総括しますと、結論として、今回の朝日新聞社の賭け麻雀を行った社員に対する処分は、法的な分析を踏まえても「出勤停止1カ月」は妥当性がありそうです。

本稿でお伝えしたかったのは、その結論に至るまでのプロセスです。企業による従業員に対する懲戒処分は、国が国民に刑事罰を課すのと同様、慎重に行うことが求められ、決して雰囲気に流されたり、恣意的な判断で行ったりして良いものではありません。

その点をご理解いただくとともに、万が一、自分が不当な懲戒処分を受けそうになったときには、身を守るための知識として、身につけておくといいでしょう。

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