賭け麻雀の朝日新聞記者「停職1カ月」の妥当性

「なぜ解雇しないのか」の厳しい意見もあるが

次に「トカゲの尻尾切り」についてです。

「トカゲの尻尾切り」とは、企業内で、より責任を負うべき者がいるはずなのに、現場の社員だけを懲戒処分して事を済ませようとすることです。

今回の賭け麻雀事件は、記者と取材先の関係を構築する中での延長線上で発生したものであり、手段は不適切であったにせよ、業務に起因したものでした。この点に関して、筆者が朝日新聞社の対応を評価できると思ったのは、朝日新聞社は、本人だけでなく、上長にも監督責任を問い、けん責処分を行ったということです。

また、「報道倫理が問われる重い問題と受け止めており、取材先との距離の取り方などについて整理し、改めてご報告いたします。(2020/05/29 朝日新聞コーポレートサイト)」として、企業としての改善を図ってく旨を表明している姿勢も評価できるでしょう。

朝日新聞社としても、記者と取材先の関係性を企業として適正に管理できていなかったことを自認したからこそ、自浄作用が働き、今回のような対応になったのでしょう。もし、朝日新聞社が、賭け麻雀をした社員個人を場当たり的に処分して終わりにするだけであったら、妥当な懲戒処分であったとは言えません。

あるトラック運送事業者では‥‥

残念なことに、世の中には、現実に「トカゲの尻尾切り」のような懲戒処分が行われるケースも存在します。

一例としては、あるトラック運送事業者が、社員の運転手に対し、交通事故を起こしたことを理由として、懲戒解雇処分を行いました。

処分を受けた運転手は、会社が無理な運行計画を命じたため、疲労が蓄積して事故の発生要因になったことを主張して裁判を起こし、その結果、裁判所は実際に過密な運行計画だったことを認定し、解雇無効の判決を出しました。

本件は、運転手が裁判を起こさなければ、無理な運行計画を立てた会社の責任は不問とされ、運転手1人が責任を負わされるところでした。

確かに、従業員の立場としては、会社の指示が違法、または不当なものであったとしても、その力関係から、断ることが難しいという現実が存在します。

会社の指示に従って業務を行ったにもかかわらず、結果的に自分だけが懲戒処分を受けるというような事態に直面したら、上記の例のトラック運転手の方のよう、勇気を出して裁判に訴えたり、あるいは労働基準監督署に相談するといったアクションを検討したりすることができます。

最後に、第3の「行為と処分のバランス」についてです。

懲戒処分といっても、「けん責」から「懲戒解雇」まで、その重さには幅があります。懲戒処分の重さは、非違行為の重大性とバランスが取れているものでなければなりません。

一般的には次の7段階とされています。処分の軽い順に記します。

訓戒
けん責
減給
停職(出勤停止)
降格
諭旨退職・諭旨解雇
懲戒解雇

中にはSNSやニュースサイトのコメント欄などで「なぜ解雇しないのか」という厳しい意見を投げかける人も見かけます。この点、朝日新聞社が、賭け麻雀を行った社員に対する、「出勤停止1カ月」という処分は、結論から言えば、妥当性があるというのが筆者の見解です。

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