国際競争からの脱落も、岐路に立つメガバンク
これに対し、3メガバンクは特に資本の「質」の低さがネックとなる。かつて不良債権の処理を行う原資の調達、いわば、後ろ向きの調達を優先株や優先出資証券、劣後債などのハイブリッド証券の発行に依存せざるをえなかったからだ。それだけにバーゼルの「たたき台」は、資本政策を占ううえで極めて重要なものだ。
注目すべき控除項目 邦銀に厳しい協議案
では、市中協議案の内容はどうだったか。金融庁は、時間軸の方針について、日本の主張が盛り込まれたことを“戦果”として強調する。新規制の実施に際し、「金融市場の安定及び持続的な経済成長との整合性を確保する」、さらに「十分に長い」グランドファザリング(新規制実施後も既存の取り扱いを一定期間認めること)や経過措置(部分的な後ろ倒し)を設けると明記された。
確かに、先進国の景気回復の糸口が見えない中、拙速な規制導入はプロシクリカリティを助長する懸念がある。通常、規制の決定は何年もかけて議論するところ、今回は10年末に決定と急がれ、導入開始時期も12年と早めに設定された。これはルール策定を主導する英米で、金融機関への公的資金注入に対し国民からの批判が強いため、金融システムの早い回復をアピールしたいという政治的な背景があるといえる。
協議案を受けて、導入時期の「延期」とも報じられ、メガバンクの株価は一時反発した。だが、規制の実施時期について、かねて「12年末までを目標に、金融情勢が改善し景気回復が確実になった時点で段階的に行われる」としており、そこに変更はない。要は、景気の持続的な回復を妨げないように慎重に導入することが確認されただけ。資本強化の難題を抱える日本勢に猶予ができたと見るのは間違っている。
むしろ、驚くべきは協議案で新たに提案された中身の厳しさ。特に問題なのは、資本の中身を大きく左右する「控除項目」の取り扱いである。