コロナ疲れに染みる「シェイクスピア」名言4選 ペストに屈しなかった名劇作家から学ぶ叡智

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② 生死は自分で決めるものではない
「辛抱が肝心だ。
 この世を去るのは、生れ出てくるときと同じ。
 そうなる時がやがてくる。」

 『リア王』第5幕第2場

忠臣グロスター伯爵は、リア王の次女リーガンとその夫によって両目をくりぬかれたうえ、自身の庶子にだまされ、荒野に放り出される。あまりのことに「もう死んでしまいたい」と嘆く伯爵に、息子エドガーが言うセリフ。

生まれてくるのも死ぬのも運命であって、人間にその時を選ぶことはできないと諭す。

自粛生活に疲れ切った心に刺さる名言

③ モチベーションを上げるのが大切
「喜びのないところでは得るものはありません。
 ですから、好きなものを勉強なさい。」

 『じゃじゃ馬馴らし』第1幕第1場

富豪バプティスタの次女ビアンカは美女として名高く、多くの求婚者がいる。しかし、「じゃじゃ馬の長女キャサリーナが片付くまで、次女は結婚させない」と父は宣言している。そこへヴェローナの紳士ペトルーキオが登場し、キャサリーナをしとやかで従順な妻に育て上げる喜劇。

次女ビアンカに恋する青年ルーセンショーの従者である、トラーニオのセリフ。好きこそものの上手なれ。自身の情熱がなければ何ごとも成就しないということを肝に銘じていたい。

④ 時の流れに委ねてみる
「ああ、時よ、このもつれ、
 ほぐすのはおまえ、私じゃない。
 私には固すぎて、解きほぐそうにも、ほぐせない。」

 『十二夜』第2幕第2場

イリリア公爵オーシーノはオリヴィア姫に恋をしているが、服喪中の姫は求婚を断る。一方、海難で生き別れになった双子の兄妹のうち、妹ヴァイオラは、男装して「シザーリオ」と名乗り、公爵に仕えるようになる。

公爵に信頼され、その恋の使いを託されたシザーリオは公爵に恋をしているが、皮肉なことにオリヴィア姫にほれられてしまい、それを拒む。全員が片思いという、虚しい恋の一方通行である。

『心を支えるシェイクスピアの言葉』(あさ出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

そんな中、現れたヴァイオラの双子の兄のセバスチャンは、妹が扮するシザーリオに間違えられ、オリヴィア姫の愛を受け入れて結婚。最後に双子がそろうことで、すべての誤解が解け、公爵はヴァイオラと結ばれる。

あちらを立てればこちらが立たず……という煮詰まった状況の中で、ヴァイオラが行き着いた心境、自分ではどうすることもできないから、時に頼るしかないという、ある種の達観と言える。

今の世界の状況も同様で、コロナ感染から身を守るため、不要不急の外出を避け、マスク着用・うがい手洗いを励行しながら、感染の終息とワクチンの完成を待つ。そうして、時は効力を発揮し、光明が見えてきている段階だろう。

河合 祥一郎 東京大学大学院 総合文化研究科 教授

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かわい しょういちろう / Shoichiro Kawai

東京大学文学部英文科卒。東京大学より博士号、ケンブリッジ大学よりPh.D.取得。日本シェイクスピア協会会長(2019-2020)。『ハムレットは太っていた! 』(白水社)でサントリー学芸賞受賞。主著に『シェイクスピア――人生劇場の達人』(中公新書)ほか。角川文庫よりシェイクスピア新訳、角川つばさ文庫より児童文学新訳を刊行中。Kawai Project主宰として演出も行う

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