コロナ禍の日本を襲う「今夏」の怖い気象リスク 「避難所」の三密は災害時に回避できるのか

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次に集中豪雨やゲリラ豪雨をもたらす降水量の変化を見てみたい。予報用語で「非常に激しい雨」とされる1時間の雨量50~80mmは、人が受けるイメージは「滝のように降る」というもので「傘はまったく役に立たなくなる」状況だ(気象庁HP)。

全国の1時間降水量50mm以上の最近10年間(2010~2019年)の平均年間発生回数は約327回で、統計期間の最初の10年間(1976~1985年)の約226回に比べ約1.4倍に増加している。

2019年の発生回数は377回だった。大雨(日降水量400mm以上)の回数はどうか。これも増加傾向にあり、最近10年間の平均発生回数は約16日で、同期比で約2.7倍に増えている。とくに2019年の発生回数は47回と多く、この30年間で見ても2011年の50回に次いで多い。これは不安なデータだ。

台風の発生回数はどうか

もう1つ、台風の発生回数をチェックしてみよう。2019年の台風の発生回数は年間で29回。上陸回数は5回だった。2000年以降で見ると発生回数は2013年の31回に次いで多い。1951年以降で最多は1967年の39回。上陸回数は2000年以降で見ると2004年の10回、2016年の6回に続く水準だ。1951年以降で見ると5回は多いほうに入る。

昨年、首都圏などに大きな被害をもたらした台風19号は1都12県で大雨特別警報が出され、東日本から東北地方を中心に広い範囲で観測史上1位の記録を更新する大雨をもたらした。温暖化による台風大型化の将来予測もあるだけに、今後の台風の勢力、進路には十分警戒が必要だろう。

では、今年の日本列島の気象状況はどうなるのか。気象庁の3カ月予報(5月25日発表)によると、気温は東・西日本と沖縄・奄美では高く、北日本は平年並みか高い。降水量は全国的にほぼ平年並みだが、6月は、西日本では前線や湿った空気の影響を受けやすいため、平年並みか多い見込みとなっている。

この夏の気象状況で、どんな点に気を付けたらいいのか。気象庁の担当者に聞いた。

「気温に関しては、今年も熱中症にはくれぐれも気を付けていただきたい。降雨量は、アメダスの数十年にわたる観測によると、1時間降水量50mm以上の発生回数などが増えてきている。一度降ると大雨になりやすいこともあるので、早期注意情報や注意報、警報などで警戒していただきたい」(気象庁気候情報課)。今年の夏も暑くなりそうだ。気温上昇と降水量に細心の注意を払いたい。

梅雨時から夏にかけて日本列島は、高温、集中豪雨、台風といった気象リスクにさらされることになる。そこに新型コロナウイルスの脅威が依然として存在する。かつてない危険度の高い夏を迎えることになるわけだ。

まず懸念されるのが、集中豪雨や台風の被災に伴う避難所生活だ。昨年10月に首都圏を直撃した台風19号の際、東京都だけで避難者は18万6886人に上った。最も多かったのは江戸川区で約3万5000人。足立区も3万3000人超となった。

東京都が都民を対象に11月に行ったアンケート(有効回答数834人)によると、避難所の課題として①プライバシーが十分に確保されていなかった②収容人数を超過していた③要配慮者の受け入れ体制が十分でなかったなどの回答がみられた。これらは東京都に限らず、全国的な課題だろう。

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