K-POP旋風牽引「BTS」愛読書に学ぶ5つの知恵 アフターコロナ時代に自分を磨く方法

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では、アフターコロナにどんな時代が到来し、どう適応するのか。そこで重要なのは、逆説的に聞こえるが、過去を学ぶことだ。ミシェル・フーコーは言う。歴史を学ぶ目的は、単に過去を理解することではなく、現在を見つめ、現実を変えるためだ、と。パラダイム変化の風を読めば、自分の思考と言葉にもそれが反映されることになるだろう。

4. 傾聴で相手の心を奪い、自分を磨く

「柔よく剛を制す」とは武道の世界でよく使われるが、これは老子の思想に由来する。相手の心を得るためには、傾聴によって相手の気持ちをよく理解することが大事だという意味だという。しかし、傾聴の大切さは口が酸っぱくなるほど言われているが、そう簡単ではない。

例えば、韓国の金大中元大統領は雄弁家で知られるが、若い頃は悪いくせがあった。物知りだった彼は相手の話をじっくり聞いていられず、いつも自分がしゃべってしまうのだ。有権者の声を聞けないのは、政治家としては致命的な欠点だ。そこで若き金大中は沈黙する練習をした。机の前、トイレの壁、腕時計に至るまで、「沈黙」と書いた紙を貼り付けた。そうして手に入れた傾聴の技術が、彼を民主化の英雄に育て、大統領に押し上げたのだ。

傾聴していると、時には耳に痛い言葉も飛び込んでくるだろう。逃げ出したり、相手の口をふさぎたくなるかもしれない。しかし、陽明学の創始者である王陽明は、こう釘を刺している。「自分の短所を批判してくれる人は、すべて自分の師である」と。SNSで何気なくつぶやいた言葉に思わぬ批判の矢が飛んでくることがある。しかし、そこからも学ぶことがあるかもしれないと冷静に考えれば、それを自分の糧にする術も見つかるだろう。

5. 会話のテクニックを身につける

実のある会話をするには、感情マネジメントが大切だ。儒教で言うと、「中庸」を保つことだ。それは感情をむやみに抑えつけよという意味ではない。状況に合った適切な感情表現をすることだ。怒るべきときに怒り、うれしい話を聞けば、一緒になって喜ぶ。それが人間関係と会話の基本だと言える。

『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

だが、言うべきことがあるとしても、ソフトな言葉遣いを心がけよう。明の思想家・洪自誠は著書『菜根譚』で、他人の過ちを指摘するなら「春風が凍土を融かし、暖気が氷を消すように」、その表現には細心の注意を払えと述べている。助言や忠告も、相手から求められない限り、なるべくしないに越したことはない。誰でも自分の問題にはたいてい気付いているから、わざわざ教えてあげる必要はない。

これはとくに、オンラインでのやりとりでは重要だ。ディスプレー越しに真意をうまく伝えることは難しい。ちょっとした行き違いが誤解を生む。言わずもがなのことを言って失敗した経験は筆者にもある。本当に相手に言うべきなのかどうか、まずは一呼吸おいて考えよう。

「自分の名前と声を見つけてください」

2018年9月、国連総会の場でRMはBTSを代表して、世界の若者たちに向けてこう語りかけた。

「あなたが誰なのか、どこから来たのか、肌の色やジェンダー意識は関係ありません。ただ、あなたのことを話してください。話すことで、自分の名前と声を見つけてください」(ユニセフのサイトから)

1人考える時間を持てた今こそ、性別や国籍という社会的な縛りからいったん離れて、本当の自分自身を見つめ直し、自分だけの声を発するための好機ではないだろうか。

米津 篤八 朝鮮語・英語翻訳家

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よねづ とくや / Tokuya Yonezu

早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社に勤務。退職後、ソウル大学大学院で朝鮮韓国現代史を学び、現在は一橋大学大学院博士課程在学中。翻訳書に『言葉の品格』『言葉の温度』(光文社)、最新翻訳刊は『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』(シン・ドヒョン ユン・ナル著/かんき出版)。

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