佐藤優「抑えきれない怒りに向き合う唯一の策」 怒りが怒り呼ぶ負の連鎖から抜け出すには?

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喜怒哀楽の感情のうち、「怒」だけは抑えたほうがよいと佐藤氏は語る。怒りの具体的な抑え方を自身の経験を例に解説してもらった(写真:坂本禎久)
人間の喜怒哀楽の感情のうち、「喜」と「哀」と「楽」に関しては思う存分表現してよいと思います。下手に押さえつけるのではなく、表に出して発散する。しかし、「怒」だけは別です。怒りは、思う存分発散したら大変なことになります。怒りを抑えることができずに、職場にいづらくなったり、人間関係を損ねたり、いろんなものを失ってしまうリスクがあります。
アンガーマネジメント=怒りのコントロールがとくに最近、注目されています。どうやら世の中全体がカリカリしていて、怒りっぽくなっているようです。近年、あおり運転がこれだけ取り上げられるのも、ちょっとしたことでイライラしたり、カッとしてしまう人たちが増えていることの表れでしょう。また、ネット上での発言が大勢の非難を一気に浴びる「炎上」も、そんなイライラの表れだと考えられます。
不倫したり不祥事を起こしたりすると、メディアもネットも一斉に同じように徹底的に攻撃する空気があります。社会全体がシュリンクして、どんどん厳しく、窮屈になっていることが影響していると思います。世の中全体にフラストレーションがたまっているのです。
これからの時代、アンガーマネジメントは非常に重要なポイントです。では、具体的にどうやって怒りを抑えるべきでしょうか? 拙著『メンタルの強化書』をもとに解説していきます。

怒りが増幅するのはどちら?

フロイトは、「怒りは抑圧されることで増す」と考え、「怒りのエネルギーを発散することで怒りが鎮まる」と考えました。しかしどうやらそれが誤りだとわかってきた。

アメリカで行われた興味深い実験があります。学生たちに作文を書かせ、学生仲間がそれをひどくけなすのです。その後学生たちを2つのグループに分けました。1つはけなした学生の写真を見ながらサンドバックを相手と思って思い切り叩く。もう1つは2分間、別の部屋で静かに座っている。

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