佐藤優「抑えきれない怒りに向き合う唯一の策」 怒りが怒り呼ぶ負の連鎖から抜け出すには?
フロイトの理論が正しければ、サンドバックを叩いたほうはすっきりとして怒りが治まるはずです。ところが結果は逆でした。叩いたほうはますます興奮し、怒りが増加したのですが、静かに部屋に座っているグループは、叩くほうに比べ、はるかに気持ちが治まったのです。
このことは、怒りだけではなく、人間は行動によって感情を作り出すという事実を示しています。つまり悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しくなる。面白いから笑うのではなく、笑うから面白くなる。
一見信じがたい理論ですが、その後の心理学のさまざまな研究と実験によって、そのことが証明されているのです。つまり、怒りに任せた行動は、怒りを増幅させるのです。イライラしているときほど、静かに落ち着いた行動を取る。瞑想したり手を合わせて祈るというのが効果がある。ゆっくりとした音楽を聴いたり、美しい景色や絵画などを鑑賞するのもよいでしょう。
立ち振る舞いもゆっくりと穏やかにする。できれば笑顔を作る。口角を上げるだけでも、感情の動きが変わることが実験で明らかにされています。怒りをコントロールすることが、心を整え、強くする1つの方法だと考えます。
怒りの原因がわかれば怖くない
怒りをコントロールするためには、相手がどういう状況で、どんな感情でこちらに向かっているかを知ることも大切です。これがわかれば、不安感や恐怖心はかなりの部分が軽減されます。
私はかつて背任と偽計業務妨害で逮捕起訴され、512日間東京拘置所に勾留され、東京地検の取り調べを受けました。多くの人は突然の自分の環境の変化と、検事の威圧的な態度や脅しで精神的に混乱し、完全に検事の言いなりになるそうです。ありとあらゆる社会的なつながりを絶たれ、無力な存在に落とされるわけですから、むしろそれが当然でしょう。
なぜ、私がそれでも自分の意思を貫くことができたか? それは自分の置かれている状況を客観的に把握し、そこから相手が自分に何を求めているか。相手がどんな状況にあるかを冷静に分析できたことが大きいと考えています。
私は国家の方向性が大きく変わった中で、その時代の転換を行うための国策として逮捕されたのだと理解しました。時代の転換の中で最も障害になるのが鈴木宗男さんであり、その鈴木さんを排除することが必要になります。鈴木さんの犯罪を立件すべく、私から都合のよい証言を引き出すことが、私を逮捕した最大の目的です。
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