一方で環境に恵まれ、地元資本企業が元気な地域は、すでに次の段階に向けて準備を始めています。緊急事態宣言が解除された地域では5月の中旬ごろからは、人の動きが回復傾向に入っているところも見受けられ、夏以降の地元観光客の受け入れに向けた準備をしているところも少なくありません。
また、熊本市などいくつかの自治体では「ふっこう割クーポン」などで支援を表明していたりします。このような地域は、大都市よりも早い経済回復が期待でき、今後の首都圏などからの移転経済を効果的に取り込むこともできるでしょう。
問題は地方の「偉い人たち」が変われるかどうか
ここで東京など大都市からの業務機能移転、また2地域居住など含めた移住定住の足かせになるのは、都市に住む人々の意識ではなく、むしろ地方の「偉い人たち」の意識にあります。
これまでも幾度となく、危機のタイミングでの地方への関心の高まりはあったわけですが、それが全くモノにできないていないのは、地方にこそ問題があります。具体的に言えば、地方が大都市よりも、これからの新しい生活を提案できるような「先回りした動き」を全くとらないところにあります。
2011年の東日本大震災後においても、地方への関心が高まったものの、地方側は過去のやり方をほとんど変えないがゆえにその流れは頓挫してしまいました。その結果として、むしろ東京に年間8万人以上の人々が転入超過するという一極集中状態が強化されて行きました。
地方からの若者の流出が止まらないのは、教育や就業とともに「地方の閉鎖的な空気から逃れるため」という理由も多く挙げられます。特に今の人口移動で顕著なのは、20〜24歳の女性が男性よりも多く東京都へ転入超過していることです。
これらの女性に対して行われたグローバル不動産研究所による調査では、上京の理由として「東京で暮らしたかったから」「親元や地元を離れたかったから」が多く挙げられ、全体の半数は「将来地元に戻る予定はない」と答えています。さらに多くが「東京のほうが治安でも安心安全」と回答しています。
つまり、都心部などを中心にせっかく若い世代ほど地方に関心を示してくれているのに、今地方から都市部へ向かっていっている人たちが表明している問題を解決しなければ、結局またほとぼりが冷めれば、都心集中の傾向に戻っていくことが予想されるのです。
例えば地方の不動産オーナーが「この地域に保証人はいるか」などといって敷居を高くしたらどうなるでしょうか。「セカンドハウス」や「マルチハビテーション」(複数の住居で過ごすライフスタイル)という新たな住み方などに理解を示す姿勢がなければ、都心の人々が新たなライフスタイルを構築することは困難です。
自治体の各種手続きも、オンラインで完結できる状態になっていれば、地方に住民票を置くことも容易となり、その自治体も住民税や所得税を得られる可能性もあります。しかし「必ず窓口に来て手続きをするように」などとやっていたら、地方はいつまでたってもその人にとって「2番目以下」にしかならず、税収面でのプラスも限定的になってしまうでしょう。
都心の地域に住んでいる人たちがこれまでと異なる「オルタナティブ」(他の選択肢)を模索してもそれを排除していては、地方にはいつまでもチャンスをものにする日はきません。地方にとって、今回のコロナショックを「都市との新たな関係を構築するチャンス」にできるかどうかは、「地方の偉い人たち」が「変わることを決断」できるかどうかにかかっていると言えます。
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