スポサト氏は日本の事情に詳しく、「感染の報告はかならず医師が手書きで、保健所にFAXして、それが政府で集計される」とか、「緊急事態宣言があっても、(アメリカが書いた戦後憲法のお陰で)、政府は外出禁止や企業の休業を命じることができない」とか、「日本人は自分たちが法令遵守で健康重視なのだと言うが、皆が真剣に取り組んでいるようには見えない。その典型がパチンコ屋だ」など、いちいち耳の痛いことにも言及している。
国民性のせいなのか、生活習慣のせいなのか、それともBCG接種のお陰なのかは不明なるも、この国が危ういところを奇跡的にすり抜けていることは間違いない。スポサト氏の眼から見れば、それは「日本の奇跡」ではなく、単に「日本の謎」である。だから他国が真似をしようとしても参考にならない。いってみれば、「あの子はフードファイターのようによく食べるし、運動もしてないのに、体質のせいか全然太らない。ずるいよなあ」と言われているようなものである。
「イノチ」と「おカネ」のバランスが一層大事になる
ひとことだけ弁明させてもらえば、日本のPCR検査数が少ないのは、2月に国内で感染者が増え始めた時点で、わが国はダイヤモンド・プリンセス号という「巨大爆弾」を抱えていた。当時の専門家会議は、「これはもう、希望者全員に検査をしていたら医療現場がもたない。重症化した人を優先して、クラスターつぶしに専念する」という判断を下したらしい。今から考えれば、正しい選択だったと言えるだろう。
もっとも、今後は「経済活動の再開」が課題になってくる。その場合、検査数が少なくて実態が読めないことは、いろんな意味で障壁となるだろう。この辺で民間にアウトソーシングするなどして、PCR検査や抗体検査の数を一気に増やすように方向転換すべきではないか。ウイルスとの戦いは長期戦になるはずである。十分なデータを蓄積し、「感染防止」(イノチ)と「経済活動」(おカネ)の微妙なバランスをとっていかなければならない。
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