トヨタの相次ぐ大量リコールは「悪」なのか 600万台リコールが映す、自動車業界の"現在地"

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もっとも、国内のリコール件数が、ここに来て増えているわけではない。昨年度の国内リコール台数は過去最多だったが、件数自体は過去10年の平均より若干少ないくらいだ。

トヨタがとりわけ、リコールが多いわけでもない。昨年度の同社のリコールは10件、165万台。日産自動車は18件、174万台、ダイハツ工業は3件、172万台だ。過去5年間で見ても、年ごとにデコボコはあるものの、約3割の国内シェアを考えれば、その水準は決して高くない。海外でのリコール規模が大きくなるのは、販売台数が多いためだ。

技術力は落ちていないか

販売台数世界一のトヨタが背負う責任は重い(撮影:鈴木紳平)

むろん、リコール自体は威張れる話ではない。

あるモータージャーナリストは「以前ならリコールしなかった問題でもリコールしているとしても、それをメーカーが言うのは“甘え”だ。何らかの不具合があることには間違いない。技術力が落ちているのではないか」と苦言を呈する。

トヨタの世界全体でのリコール台数が大きいことは事実。対応には莫大な費用がかかる。リコールを発表した4月9日から、同社の株価は続落。株式市場は事態を決して軽くは見ていない。

2012年から2年連続で販売台数世界一となったトヨタ。それだけに業界のトップランナーとして、大量リコールが相次ぐ現状を真摯に受け止め、率先して対応を進めていく必要がある。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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