中国勢が続々上陸、過熱する米国EV戦争
ベンチャー買収、現地生産を始めた企業も
中国企業が、電気自動車(EV)での米国進出を加速している。
今年2月、中国の自動車部品メーカー、万向集団が米EVベンチャーのフィスカー・オートモーティブを買収した。フィスカーは世界初のプラグインハイブリッドスポーツカー「カルマ」のコンセプトを2008年に発表。しかし、2011年の発売早々に車が炎上する事故が発生するなどの問題が起こり、わずか100台ほどを生産しただけで昨年11月に倒産した。
今年2月、競売により万向の米子会社が1億4920万ドルという高額で落札。万向の魯冠球CEOは「数カ月以内に生産を再開、すでに予約の入っているカルマを年内にも顧客に届ける」と明言。18カ月以内に米国内で1000台、欧州で500台の販売を予定しているという。
吉利汽車、BYDも参入
ボルボ・カーズ(スウェーデン)を傘下に持つ吉利汽車は3月3日、英国のEV開発会社エメラルド・オートモティブを買収した。エメラルドは「t-001」と呼ばれる電気商用バンを生産。電池のみで106キロメートル走行することができ、電池が少なくなっても、ガソリンエンジンで発電機を回すことで、最大650キロメートル継続走行ができる。主にタクシー用として使われており、英国ではすでに販売されている。
買収の目的は、欧州や米国でタクシー用のEVを生産・販売することだ。同社広報、ビクター・ヤン氏によると「今後5年間で総額2億ドルをエメラルドに投資する用意があり、うち500万ドルは米国内の工場建設予定地に充てる」と言う。
電池・自動車メーカーのBYDはEVバスの生産を米国内で始めた。昨年、カリフォルニア州南部のランカスター市と1000万ドル以上の契約を交わし、キャンピングカーの生産施設を買収。それを改装してEVバス工場として始動させた。ロングビーチ市から10台の予約が入っており、今年5月にも納品する。
BYDはこの工場で、バスだけではなく、EV「e6」の生産、販売を目指しているとみられる。というのも、米国、特にカリフォルニア州では、バスはほぼCNG(天然ガス)車であり、継続走行距離の少ないEVバスにそれほど需要があるとは考えられないからだ。またBYDは、米レンタカー大手ハーツと契約し、e6をレンタカーとして利用する試験を行っていた。いずれレンタカー用や一般消費者への販売に踏み切る可能性は高い。
中国メーカーにとって、自動車の巨大市場である米国での販売は悲願だ。過去に何度も米国での自動車販売を目指して来たが、ガソリン車では、米国の安全基準、排気ガス規制などの壁を越えることができなかった。排ガス規制などがないEVの分野でいち早く商品を投入し、地位を確立しようという狙いがある。
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