中国勢が続々上陸、過熱する米国EV戦争
ベンチャー買収、現地生産を始めた企業も

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ただ、思惑通りに売れるかは未知数だ。米国内には中国メーカーが生産するEVに対する不信感がある。

実は「中国製」EVが、米国で販売されていたことがある。手掛けていたのは、米国のEVベンチャーのコーダ・オートモーティブだ。2012年から販売を開始。中国からバッテリーをはじめとした主要な部品を輸入し、米国で組み立てていた。価格は3万9900ドルで「米国で最も安いEV」という触れ込みだったが、1年間で117台しか売れず、昨年経営破綻した。

売れなかったのは、デザインに魅力がない、性能の割に価格が高い、販売当初からリコールが相次いだ、などの理由がある。

バッテリーの開発競争も激化

EV普及の大きな課題になるのは、航続距離の長さなどの品質を向上しながら、価格をどうやって抑えるか。その解決のカギを握るバッテリーについても、中国メーカーは積極的に投資をしている。

フィスカーを買収した万向は昨年、経営破綻した米国のリチウムイオン電池ベンチャー、A123システムズを買収している。BYDはランカスターのバス工場建設と同時にバッテリー工場も併設した。EVとバッテリーを同時に開発・製造することで、品質向上とコストダウンの両立を図る。

 ただし、ライバルたちも黙ってはいない。米EVベンチャーのテスラモーターズは2月、総投資額50億ドルに上るリチウムイオン電池の新工場「ギガファクトリー」を建設する方針を明らかにした。2017年に稼働する予定で、テスラのCEO、イーロン・マスク氏は「大量生産によりバッテリー価格を現在より3割程度下げられる。安定したバッテリー供給があればテスラを年間50万台生産ベースにもっていける」との声明を出した。

テスラだけでなく、GMをはじめとした米国の大手自動車メーカー、日本勢でもトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車など、各社が着々とEVの開発を進めている。

2013年の米国のEV販売台数は前年比1.8倍の9万6702台(プラグインハイブリッド車含む、Electric Drive Transportation Association調べ)。2013年の車全体の販売台数1553万台に占める割合は小さいが、成長市場であることは間違いない。今後ますます激しい戦いが繰り広げられるだろう。

(撮影:Getty Images)

土方 細秩子 ジャーナリスト

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ひじかた さちこ / Sachiko Hijikata

アメリカ在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、アメリカの社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス滞在経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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