コロナとSDGsで「企業変革」は待ったなしだ 伝説の経営コンサルが説く未来戦略のすすめ

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とはいっても、巷を賑わせているSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)」のことではない。今のSDGsの17目標(さらにその下の169の細目)は、国連でもお墨付きを得たものだ。

しかし、そのような当たり前の目標だけで、本当に理想的な経済と社会を作れるだろうか。しかも、しょせんは2030年までの目標であり、賞味期限はあと10年だ。

筆者が提唱する新SDGsは、Sustainability、Digital、Globalsという3つのコンセプトを重ね合わせたものである。

サステイナビリティは、現行のSDGsの先を想定したものだ。例えば地球だけでなく宇宙も視野に入れ、生物多様性だけでなく無生物(例えばロボットなど)との共存を図り、健康寿命だけでなく幸福寿命を伸ばすことに知恵を巡らせなければならない。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)旋風は、昨今まさに猛威を振るっている。例えば「アマゾンエフェクト」は、あらゆる業種に業態変革を迫る。とはいえ、どうしもデジタル技術のほうに気を取られてしまう。

しかしDXの本質は、DではなくX、すなわち変革(トランスフォーメーション)にあるのだ。いかにデジタルのパワーを活用して、事業モデルや資産モデル、さらには経営モデルそのものを変革するかが問われているのである。先にご紹介した、味の素の新構想は、まさにそのような高い視座にたった変革を目指したものである。

そして、グローバル。20世紀後半、世界はボーダーレスに向かうと信じられてきた。しかし、その反動で国家意識、民族意識などが台頭し、現実はボーダーフルになりつつある。Globalにsをつけているゆえんである。ナイーブにグローバル戦略を展開するのではなく、地政学(Geo-politics)、さらには地経学(Geo-economics)を見極めることの重要性がますます高まってきている。

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この新SDGsを視野に入れた次世代経営のあり方については、現在、構想を深めている途上であるが、今ここで強調したいことは、コロナ危機を契機に、この3つのマクロトレンドがスピードとスケールを桁違いに高めていくということだ。その結果、あらゆる企業が変革まったなしの状況を迎えることになる。

バイオウイルスとデジタルウイルスの猛威は、牧歌的なレベルにとどまっていたサステイナビリティ問題に、想定を大きく超えるチャレンジを投げかけている。デジタル化の流れは、コロナ危機をきっかけに、桁違いに進んでいくはずだ。そしてコロナ危機が助長するグローバルの分断とその再統合は、人類にとっての最大のパズルとなることだろう。

企業経営の現場では、コロナ危機をトリガーとして、このような開放系かつ非線形な発想がますます求められることになる。そして、あらゆる生物同様、変革を自社のDNAにビルトインした企業だけが生き残り、非連続な進化を遂げていくはずだ。

今の余剰時間をACのスタートダッシュに

BC(ビフォーコロナ)とAC(アフターコロナ)のデルタ(変化量)を生む力は、その間、つまり、コロナ危機の真っただ中にある今、どれだけ見えない未来に向かって準備ができるかにかかっている。

幸か不幸か、当面、外出自粛ムードやリモートワークは続きそうだ。この突然舞い込んできた余剰時間(スラック)をいかに有効に使うかが、ACのスタートダッシュを大きく左右するはずだ。

この機会に、アフターコロナに向けて、じっくりと未来を見据えて変革の構想を練っていただくことを、ぜひおすすめしたい。

名和 高司 京都先端科学大学ビジネススクール教授、一橋ビジネススクール客員教授

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なわ・たかし / Takashi Nawa

1980年東京大学法学部卒業、三菱商事入社。90年ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得(ベーカー・スカラー)。その後、約20年間、マッキンゼーのディレクターとしてコンサルティングに従事。10年より一橋大学教授。22年より現職。ボストン コンサルティング グループ、アクセンチュアのシニアアドバイザー、ファーストリテイリング、デンソー、味の素などの社外取締役を歴任。現在、SOMPOホールディングスの社外取締役、朝日新聞社の社外監査役など。著書に『パーパス経営』(東洋経済新報社)、『超進化経営』(日本経済新聞出版社)、『問題解決と価値創造の全技法』(ディスカヴァー21)などがある。

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