コロナとSDGsで「企業変革」は待ったなしだ 伝説の経営コンサルが説く未来戦略のすすめ

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私は、ファーストリテイリングの社外取締役として、また日本電産の社内ビジネススクールのリードコーディネーターとして、10年近く両社の変革を支援してきたが、両社に共通しているのは、変化を非常事態ではなく、「常態」として取り込んでいく変革力である。

名和高司(なわ たかし)/一橋大学ビジネススクール国際企業戦略専攻客員教授。東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネススクール修士(ベーカースカラー授与)。三菱商事を経て、2010年までマッキンゼーのディレクターとして、約20年間、コンサルティングに従事。自動車・製造業分野におけるアジア地域ヘッド、ハイテク・通信分野における日本支社ヘッドを歴任。日本、アジア、アメリカなどを舞台に、多様な業界において、次世代成長戦略、全社構造改革などのプロジェクトに幅広く携わる。ファーストリテイリングなどの社外取締役を兼任。近著に『経営改革大全』『CSV経営戦略』がある(写真:名和高司)

ファーストリテイリングの柳井正社長は「Change or Die」という経営方針を掲げている。日本電産の永守重信会長は「脱皮しない蛇は死ぬ」というニーチェの言葉を多用する。そして、危機こそ、日ごろから磨き上げている変革力が、最もパワーを発揮する絶好の機会なのである。

両社のもう1つの共通点は、いずれも創業者のトップが絶大なカリスマ性を持っている点だ。それゆえに、普通の企業にはあまり参考にならない特異例に見えるかもしれない。しかし、コマツ、良品計画、リクルートなどは、創業者トップのカリスマ性に頼ることなく、組織に組み込まれた変革力をバネに、そして危機をトリガーとして進化し続けている。

今回のコロナ危機を経て、変革力という動的能力(ダイナミック・ケイパビリティ)を身につけたこれらの企業は、さらにたくましく成長していくだろう。コロナ危機に頭を抱えている多くの企業が、これらの企業群から学べることは少なくないはずだ。

変革力はどのように身につけるのか

企業変革力は、それぞれの企業が自ら実践し、その試行錯誤の中から体得しなければならない。しかし、だからといって、無手勝流に実践しても時間がかかるだけだ。

今回のように、危機に直面した際に、単に「復旧」や「復興」するだけでは、大きな構造変化から取り残されてしまう。これまでの仕組みを変え、異次元の成長に向けた正しい第一歩を確実に踏み出す必要がある。

確かに変革には大きなリスクを伴う。しかし変化が常態化する時代には、「リスクを取らない」ことが、最大のリスクなのである。では、やみくもにリスクテイクするのではなく、リスクを前もって予知し、正しくリスクをとるにはどうすればよいのか。

そのためには、企業変革の落とし穴と成功するための定石を、あらかじめ頭に入れておくことだ。その一助になればと願って上梓したのが、『企業変革の教科書』である。教科書と銘打っているとおり、ここでは企業変革に求められる広範な知恵をふんだんに盛り込んだつもりだ。

筆者はマッキンゼーのシニアパートナー、ボストン コンサルティング グループのシニアアドバイザーとして、四半世紀にわたり、100社を優に超えるグローバル企業の変革を伴走してきた。今なお、さまざまな立場で変革のお手伝いをしている企業は30社以上に上る。本書は、そのような実際の経営現場でのコンサルティング経験を集大成したものである。

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