コロナで経営危機の鉄道、現行法で救済可能か

各社個別の努力に限界、救済策を検討すべき

最近では、2007(平成19)年に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が、2013(平成25)年に「交通政策基本法」がそれぞれ制定され、活性化・再生事業、輸送高度化事業など、鉄道の安全性向上に資する設備への投資に対する補助や鉄道整備をまちづくりの一環としてその活性化を支援する制度が整いつつある。

しかし今回は、そもそも一鉄道事業者で背負いきれない大規模な不可抗力要因による経営悪化に対する支援であり、これらの制度が予定する積極的な鉄道の効用拡大の範疇ではない(もちろん、この感染症問題を機に積極的な鉄道の再構築がなされることを否定はしない)。

従来の鉄道への支援制度には「鉄道軌道整備法」に基づき、鉄道が外的要因により被害を受けた場合になされる補助がある。

鉄道軌道整備法が「助成の対象とする鉄道」には、「産業の維持振興上特に重要な鉄道であって、運輸の確保又は災害の防止のため大規模な改良を必要とするもの」(第3条第1項第2号)、「設備の維持が困難なため老朽化した鉄道であって、その運輸が継続されなければ国民生活に著しい障害を生ずる虞(おそれ)のあるもの」(同項第3号)などが掲げられている。

感染症による乗客減は想定せず

この第3条3号と第8条第3号に基づいて、かつては赤字に苦しむ地方私鉄に対していわゆる「欠損補助」が行われ、経営維持をさせるための手段として使われていた。1993(平成5)年の野上電気鉄道(和歌山県海南市)の廃止はこの欠損補助が打ち切られたことも原因の1つだった。利用客の急減で窮境に陥った鉄道を救済する手段としては有効である。

しかし、同法は、法文上、設備や施設の改良に対する助成を前提としており、感染症による乗客減への対応は想定していない。欠損補助を実施するかどうかの基準についても、当該の鉄道が①「沿線住民の生活安定上必要なもの」であり、②「気象、地勢、道路等の状況にかんがみて他の交通機関により代替することが著しく困難な鉄道」という要件のほか、③「経営困難なため、老朽化した設備の取換及び修繕を行うことが常に著しく困難な鉄道」という要件を満たす必要がある(鉄道軌道整備法施行規則第7条)。

つまり、③の基準がある以上、これまで設備の交換や修繕を行えてきた鉄道に対しては、単にコロナウイルス感染症によって乗客が急減したという場合に「欠損補助」はできないということになる。

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