コロナで経営危機の鉄道、現行法で救済可能か 各社個別の努力に限界、救済策を検討すべき

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しかし、今回のコロナウイルス感染症は、長期的かつ全国的に甚大な影響を発生させたものであり、第2波のおそれもある。目に見えないウイルスがいつ収まっていくかわからず、人の動きもいつ活性化するかまったく見えない。

不活性化した人の流動も元に戻るまでには時間がかかるし、戻らない可能性もある。人の流動が長期間滞れば運輸収入が大きく落ち込む。その間でも、典型的な装置産業である鉄道では、人件費はもちろん設備の交換や修繕も待ったなしである。大災害による物理的毀損と同視しうるほどの鉄道の効用の毀損と言っても過言ではない。

行政による支援が必要だ

交通政策基本法では、第8条で「国は(中略)交通に関する基本施策についての基本理念にのっとり、交通に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」と定める。第9条では、地方公共団体についても、基本理念にのっとって、国との適切な役割分担を踏まえて施策の策定、実施をする責務を有する、とする。

すでに新型コロナウイルス感染症対策で国は25兆円超の補正予算を成立させ、さらに第2次補正予算も予定している。厳しい財政状況下であるが、個々人への直接支援と同じように、鉄道を含む公共交通機関への支援は、インフラの確保を通じて間接的に市民生活の維持と発展に資するという点で必要不可欠なものである。

国と地方公共団体の責務の1つとして、鉄道軌道整備法に基づく欠損補助を修正したうえで復活させる方法や、時限立法による支援、その他の補助制度により公共交通機関の維持、質的向上の支援がなされることが必要であると考える。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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