駅名の中には、長くて言いづらいもの、それほど長くはないけれども略したほうが発音しやすいものが多々ある。せっかく苦労して命名したのに、略称が一般的になってしまえば駅名を考案した鉄道会社としては苦労のし甲斐がないとも思うけれど、逆の見方をすれば、「あだ名」が付くほど世間では親しまれている証しともいえるだろう。
今回は大阪を中心に関西の駅を取り上げる。調べてみると、駅名省略の本場は関西なのではないかと思うほど、親しみを込めた愛称が普及しているようだ。
近鉄のターミナル駅
古くからある近畿日本鉄道の大阪市内のターミナル駅。1914(大正3)年に上本町駅として開業。接続する路面電車の停留場が上本町六丁目であったので、いつしか「上六(うえろく)」の通称で親しまれるようになった。
筆者は親戚が近鉄沿線に住んでいたので、幼少の頃、大阪へ遊びに行くと、市内中心部へ出かけるときは、まず「うえろくに行く」と言っていた。記憶にある昭和30年代中頃の「うえろく」、それは、この駅に乗り入れる大阪線、奈良線ともに4線ずつ、計8線の櫛(くし)形ホームを持つ堂々たるターミナル駅だった。
1970(昭和45)年に地下の難波線が開業して以降、地上ホームは全盛期ほどの華やかさでなくなったが、周辺は駅直結のホテルや百貨店をはじめ近鉄グループが運営する施設が集まっている。大規模な再開発も検討されており、将来が楽しみなエリアである。
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