学生が自ら動くケースも増えている。この間、SNSなどを利用した「FREE 高等教育無償化プロジェクト」などの学生団体が各方面に窮状を訴え、政府や世論を動かそうとしてきた。
都内の私立大3年生、大空幸星さん(21歳)もその1人だ。FREEとは別に、授業料の免除や減額を求めるインターネット上での署名活動を友人と繰り広げている。
「今の大学生の仕送りは、平均約8万円です。都内だと家賃が最低5万円もかかったりする。そこから生活費なども必要になる。それを埋めるために、学生はアルバイトをするんです。でも、バイト先は休業し、アルバイト収入はゼロの友人もたくさんいます。中には、実家の親の収入も減って、親にすら頼れない大学生もいるんです」
親にも頼れないと学生は孤立してしまう
「親にも頼れないとなると、学生は孤立してしまう。これがいちばん怖い。僕は母子家庭出身で、家庭内トラブルが絶えなかった。頼れる人が誰もいなかった。何回も、死のうと思ったこともありました。孤立の恐ろしさは、身をもって体験していますから、夢ある学生を孤立させないよう、行政は絶対に支援してほしいです」
コロナ問題の以前から、大学生への仕送りは年々減少してきた。特に7割の学生が通う私立大学に関しては、それが顕著に現れている。
東京地区私立大学教職員組合連合の調査によれば、首都圏の私立大学に通う学生の2019年度の仕送り額の平均額は、8万5300円。過去最高だった1994年の12万4900円と比べると、3万9600円も低く、1986年の調査開始以来で2番目に低かった。
大空さんは4月下旬、都内の私立大4年生の鈴木晋平さん(21歳)とともに、学費減免や一律の金銭給付を求める要望書を文部科学省に提出している。それから約半月後の5月12日、自民党は生活に苦しんでいる学生に1人10万円、特に困窮している学生には20万円を給付する緊急法案を政府に提出することを決めた。
緊急の支援策はようやく動き始めたが、鈴木さんはこう指摘する。
「まずは法案が通ってほしい。私も、下宿先のお金はすべて自分が負担しており、常にキツキツです。月6万円の学校独自の給付型奨学金をもらっていますが、家賃ですべて消える。生活費などはすべてアルバイト代で賄っています。バイト先は不動産会社の営業です。でも、コロナのせいで収入は4割減。5月末からは貯金を切り崩す生活が始まりそうです。就活で使う旅費などのために少し貯めていたんですが、果たして夏を越えられるのか……。法案が成立したら、政府はとにかく早く実行してほしいです」
取材:フロントラインプレス(Frontline Press)
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